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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十四 〜広宗、陥落〜
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「うう〜、歳っち〜。ウチかて、信じとうはないわ……アホらしゅうて」
「霞、私もだ……。力が抜けるな」
「しかし、わからないのは暴走の挙げ句、とは言え、ここまでの騒ぎになったという事ですな」
「それはですねー、もともとの民の皆さんの不満が溜まっていたせいでしょうねー」
「恐らく、きっかけは何でも良かったのだと思います。たまたま、勢いのある張三姉妹が現れ、不満を爆発させた……そんなところでしょう」
「……私も、事実を知った当初は驚きました。ですが、現に黄巾党は未だに健在です。歳三殿、どうなさいますか?」
「そうだな……」
 まずは、有無を言わさず、張三姉妹の頸を刎ねる事。
 勅令が黄巾党討伐である以上、首謀者の首級を上げる事は当然だろう。または、捕らえて都に護送する。
 見せしめにはなろうが、途中の警護にかかる費えも莫大なものになる上、残党が三人を奪還しに襲撃を企てる可能性が高い。
 それに、我が軍は既に大功を挙げているのだ。
 これ以上功を成せば、間違いなく妬みを買うだろう。
「疾風。この事に気付いているのは、黄巾党以外には?」
「恐らく、今のところは我らだけかと。ただ、曹操殿もしきりに細作を放っているようですから、いずれは真相が知れましょう」
「……ふむ」
 華琳なら、どう対処するであろうか。
 容赦なく処断するか、或いは利用するか。
「お兄さん、とにかく捕まえてみてはどうですかー?」
「風。何か、思うところでもあるのか?」
「いえいえ。お兄さんが即決しないところを見ると、張三姉妹の処置にお困りなのかと思いましてー」
「どうやら、単純に頸を刎ねて終わり、とは行かないようですしね。疾風、張三姉妹の警戒は厳重、と言いましたね?」
「ああ。連中としても、いくら担ぎ上げた御輿と言えど、その価値はわかっている筈だ。それに、熱心な信者は個人的にでも守り通すでしょう」
「討つ、となれば至難の業。だが、逃がす、となればどうだ?」
「ご主人様! な、何と言う事を!」
「待て、愛紗。確かに、逃がすとなれば話が変わりますが……歳三殿。本当に逃がすのですか?」
「いや。逃がすと見せかけて、捕らえたい」
「捕らえるのですか? しかし、都まで護送するとなればかなりの負担になりますが」
 稟も、そこには気付いていたか。
「そのつもりはない。ただ、確かめたい事がある」
「確かめたい事、ですか」
「うむ。疾風、どうだ?」
「はっ。落ち延びるという事であれば、遣り様があるかと。ただ、稟の知恵を借りたいと思いますが」
「いいでしょう」
「では、二人に任せる故、張三姉妹を必ず連れて参れ」
「御意!」


 払暁を待ち、全軍での一斉攻撃が始まった。
 夜通し緊張を強いられた上、ただでさえ疲労が頂点に達する時間帯である。

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