第七話
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上がってきたのは、朝早くから自身の父親としゃべる男の姿。軍に忠実で、かなりの実力者である人間だった。
そして、この魔方陣が何を語っているかも悟っていた。
俊司は他の人としゃべっていて気づいてはいない。さらに、魔方陣は明らかに俊司のほうを向いている。
もはや考えることなく、彼女は走り出していた。
「俊司君! 危ない!!」
「えっ!?」
振り向こうとする俊司を無理やり突き飛ばす。
その数秒後、なんとも表現しがたい音とともに、彼女の体をなにかが貫いていた。
「あっ……」
「……!?」
俊司は体勢を崩しながら、目の前でおこった悲劇を見ていた。
由莉香の胴体には、半透明の何かが突き刺さっている。それだけじゃない。傷口から血液がポタポタと垂れ落ちていた。
脳内の整理が追いつかない。それに状況を考えると、由莉香は俊司を突き飛ばしていた。だったらこの攻撃はもともと自分に向けてのものだったのでは? だとしたら、由莉香は自分をかばったのか? 考えるだけで頭が真っ白になっていく。
「……」
由莉香は何も言わずに俊司を見つめた。その瞬間、俊司はやっと我に戻り、何が起こったのかもきちんと把握していた。
「ゆり……か……由莉香!?」
俊司が叫ぶと同時に、由莉香の胴体をとらえていた何かが離れる。傷口からは血液があふれていた。
その後、力を制御できないのか、由莉香は俊司を見ながらその場に崩れ去った。
「由莉香!!」
まだおぼつかない思考に鞭を入れながら、彼女に駆け寄る俊司。すぐさま傷口をおさえて出血を抑えようとするが、それでも抑えられる血液はごく少量だった。
「なんで……どうして……しっかりしてくれよ由莉香!」
「う……あ……」
痛みのせいかなにもしゃべることができない由莉香。状態は最悪だった。
「ちっ……最後の最後までじゃましやがって……」
助ける方法を考える俊司の耳に、冷酷な言葉が突き刺さる。同時に一人の男が彼の前に現れた。
「お前……」
「やあ、久しぶりだね。覚えてる?」
そう言って男は笑っていた。
「クルト……バーン」
「おお、覚えててくれたんだ。いやー感謝感謝」
男はそんなことを言いながら不敵な笑みを浮かべた。俊司は一瞬ですべてを理解する。この男がやったことだと。
「お前が……由莉香を……」
「いやー、ほんとは君を狙ったんだけどね? まさか、気づかれる上に君をかばうなんて思ってなかったからさ
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