暁 〜小説投稿サイト〜
東方守勢録
第七話
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
上がってきたのは、朝早くから自身の父親としゃべる男の姿。軍に忠実で、かなりの実力者である人間だった。

そして、この魔方陣が何を語っているかも悟っていた。

俊司は他の人としゃべっていて気づいてはいない。さらに、魔方陣は明らかに俊司のほうを向いている。

もはや考えることなく、彼女は走り出していた。


「俊司君! 危ない!!」

「えっ!?」


振り向こうとする俊司を無理やり突き飛ばす。



















その数秒後、なんとも表現しがたい音とともに、彼女の体をなにかが貫いていた。
















「あっ……」

「……!?」


俊司は体勢を崩しながら、目の前でおこった悲劇を見ていた。

由莉香の胴体には、半透明の何かが突き刺さっている。それだけじゃない。傷口から血液がポタポタと垂れ落ちていた。

脳内の整理が追いつかない。それに状況を考えると、由莉香は俊司を突き飛ばしていた。だったらこの攻撃はもともと自分に向けてのものだったのでは? だとしたら、由莉香は自分をかばったのか? 考えるだけで頭が真っ白になっていく。


「……」


由莉香は何も言わずに俊司を見つめた。その瞬間、俊司はやっと我に戻り、何が起こったのかもきちんと把握していた。


「ゆり……か……由莉香!?」


俊司が叫ぶと同時に、由莉香の胴体をとらえていた何かが離れる。傷口からは血液があふれていた。

その後、力を制御できないのか、由莉香は俊司を見ながらその場に崩れ去った。


「由莉香!!」


まだおぼつかない思考に鞭を入れながら、彼女に駆け寄る俊司。すぐさま傷口をおさえて出血を抑えようとするが、それでも抑えられる血液はごく少量だった。


「なんで……どうして……しっかりしてくれよ由莉香!」

「う……あ……」


痛みのせいかなにもしゃべることができない由莉香。状態は最悪だった。


「ちっ……最後の最後までじゃましやがって……」


助ける方法を考える俊司の耳に、冷酷な言葉が突き刺さる。同時に一人の男が彼の前に現れた。


「お前……」

「やあ、久しぶりだね。覚えてる?」


そう言って男は笑っていた。


「クルト……バーン」

「おお、覚えててくれたんだ。いやー感謝感謝」


男はそんなことを言いながら不敵な笑みを浮かべた。俊司は一瞬ですべてを理解する。この男がやったことだと。


「お前が……由莉香を……」

「いやー、ほんとは君を狙ったんだけどね? まさか、気づかれる上に君をかばうなんて思ってなかったからさ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ