第二幕その三
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その場に座りゆったりと佇んでいる。そこに一人の濃い赤の豪奢な服に身を包んだ若い女性がやって来た。
「皆様、こちらにいらしたのね」
彼女は女官達を見つけると優雅に笑った。
黒い髪と瞳を持つ美女である。美しいことは美しいが何処か苛烈そうである。エリザベッタの美しさが鹿のものだとすると彼女のそれは豹のものであった。肌は白いく透き通っているがその白さにも何故か棘がある。仕草の一つ一つが外に向けられておりピリピリとしている。顔付きもきつくそれが彼女を近寄りがたいものにしている。
「エボリ公女」
女官達は彼女の姿を認めてその名を呼んだ。彼女は宮廷ではその名を知らぬ者はない女性であった。
軍人として名を馳せたエボリ公爵の妹である。幼い頃から美しく勝気な少女として知られ今では兄と共に王の側近として宮廷にいる。王妃とも親しくその良き相談相手である。
「皆様、ご機嫌よう」
公女は彼女達に対して微笑んで挨拶を返した。
「今日は素晴らしい天気ですわね」
微笑んだその顔は美しい。だがやはり何処か激しさを秘めている。
「本当に。毎日こんな日ばかりだといいのに」
女官の一人が笑顔でそう言った。
「けれどそんな日ばかりだと飽きてしまいますね。雨も降るから余計に太陽がいとおしくなるものですよ」
公女はそんな彼女に対して言った。
「ところで殿下はどちらですか?」
彼女はカルロのことについて尋ねた。
「殿下でしたら僧院の中ですわよ」
女官の一人が答えた。
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