暁 〜小説投稿サイト〜
ヴァレンタインから一週間
第18話 長門有希のお引越し
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書館の貸し出しカードを作る事は出来るはずです。

 有希がゆっくりと肯定を示す形で首を動かした。

 但し、彼女は既に気付いているはず。
 人工生命体で有る彼女の場合、記憶の中に俺が存在しない事、イコール、彼女の暮らして居た世界では、このラゴウ星事件が起こらなかった、と言う事実には繋がらない事が。

 そう。事件解決後の俺が異世界に去った後に、今の俺の記憶を持った彼女が消され、俺と出会う以前の彼女が再構成されたと言う可能性が有ると言う事に……。

「それなら、さっさと貸し出しカードを作りに行ってみるか」

 それでも、未来は変えられるはず。そう思い……。思い込む事に因って、そう、彼女に対して言葉を告げられるだけの気力を回復させる俺。
 そうして、彼女に対して軽く右手を差し出した。

 そんな俺の問い掛けに、素直に首肯く有希。そして、俺の差し出した右手に、彼女によって大事そうに抱えられていた数冊の本が手渡される。
 その様な、何気ない日常の一コマ。
 しかし、何故か、その瞬間、彼女から柔らかい気が発せられたような気がしたのですが……。


☆★☆★☆


 俺自身は生まれてこの方、マンションなどに住んだ事がない人間です。故に、ひとつのフロアーに立ち並ぶ無個性な扉から、まるで異世界の入り口に等しい違和感を覚えつつあるのですが。
 そんな、俺的には妙に没個性な異常な空間に佇ながら、少し背後に意識を向ける。

 そうして、其処からかなりの威圧感(プレッシャー)を受けながら……。

「アガレス」

 短い言葉の後、ソロモン七十二魔将の第三席。魔将アガレスの能力を発動させる。
 その瞬間、世界の理を歪ませる、奇妙な違和感のような物に包まれた。

 そう。何故か、和田亮、それに神代万結、そして長門有希の三人が三者三様で見つめる眼の前で、アガレスを起動させ、時空結界で有希のマンションの部屋を封じさせられる事となった俺。
 ……なのですが。



 尚、図書館の貸し出しカードに関しては、まったく問題なく作製する事が可能でした。
 それに、有希の記憶。現在からすると未来の出来事となる、本来、貸し出しカードを作るべき日に行われた行動の記憶は、すべて彼女の記憶領域に残ったままで、別の記憶に因って上書きされる、などと言う事もなく。
 これで、この世界と、有希が元々暮らしていた……。本来、製造され、投入されるはずで有った世界と、この世界は違う世界の可能性が高いと言う事と成ったと思いますね。

 何故ならば、この二月の半ばに図書館の貸し出しカードを作って、次の五月の連休明けに、新たに貸し出しカードを作る場合には、何らかの小細工。つまり、前に作ったカードの情報の抹消や、その時の図書館の司書の記憶の改竄などを
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