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ヴァレンタインから一週間
第18話 長門有希のお引越し
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 書架と書架の間。其処で少女は、立ったまま和漢に因り綴られた書籍の内容に合わせて視線を上下させている。
 その姿は、既に世界の一部に溶け込み、まったく違和感を覚える事はない。いや、大半の人間ならば、彼女が其処に存在して居る事にさえ気付きはしないで有ろう。
 何故ならば、現在の彼女は間違いなく人払いの結界のような陣を構築している……と思われるから。

 その手の微かな違和感にも似た気配を、俺は彼女の周辺からは感じて居ますからね。

「待たせたかな」

 俺は、長門有希と言う名前を与えられた人工生命体の少女に対して、そう話し掛ける。
 尚、有希自身はこの時期……。北高校とやらに入学前の涼宮ハルヒとは出会う訳には行かないらしいのですが……。
 それでも、この図書館行きに付き合ってくれるのですから、これは、これで良いのでしょう。

 もっとも、見た目通りの読書好きと言う属性を彼女は持って居るようですから、自らが本を読む為に図書館に通っているだけであって、俺に付き合っている感覚を持って居ない可能性もゼロではないのですが。

 しかし……。
 明後日の方向に向かい掛けた思考を、彼女(有希)に視線を戻す事で、無理矢理に元へと戻す俺。
 そう。書物の世界に自然に溶け込んだ儚い雰囲気の少女と、この世界の関わり合いについての思考に。

 和田さん(水晶宮長史)の言葉を信じるのならば、有希の知って居る歴史と言うのは、異世界で訪れるはずだった未来の話。この世界では必ずしも訪れるとは限らない未来の話だと思うのですが。
 そうして、有希が元々暮らしていた世界では、未来を変える事が出来なかったとしても、この世界が俺の暮らして居た世界に近い世界ならば、未来を変える事は可能な世界のはずです。

 いや、そもそも、歴史を改竄しない限り彼ら……キョンと名乗る異世界の存在と、彼を時間移動させた未来人の少女がこの世界に登場する事が出来ないハズなので、元々、歴史を……未来を変える事が出来ない世界だ、などと言う事は有り得ませんけどね。
 この世界の場合では……。

 和田さんの言葉を信用するのならば、本来、出会うはずの無かった二人。キョンと呼称される謎の存在と、この世界に不満を持つ少女涼宮ハルヒが出会う事に因って、世界に呪が打ち込まれた、と言う話でしたから。

 そう考えていた刹那、儚げな雰囲気を放つ少女が、自らの手の内に存在する書物より視線を上げ、俺を真っ直ぐに見つめた。
 そのメガネ越しの視線に、何かを籠めて。

 この感覚は……。

「何か、俺に頼みたい事が有るのか?」

 俺は、彼女が発して居る雰囲気を、感じたままに問い返して見る。
 今日で彼女との付き合いも三日目。まして、彼女との間には霊道と言う、目には見えないけど、しっ
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