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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十九話 迎える勝利への終局
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メルクリウスであっても、その場面に直接出会うことがなければできない行為であり、また実際にそうなれば彼が生き延びる可能性もまた低いのだから。

「―――っと、どうやらあちらは決着がつきそうだな」

素粒子間(エレメンタリー)時間跳躍(パーティクル)・因果律崩壊(・タイムパラドックス)を受け、頭の一つが弾け、理の一つを失いながら、アグレドがそう呟くのを聞いてメルクリウスも果てに目を向けるとその先では朱い鮮血が舞っていた。
こちらの大規模な戦いに比べれば、向う側の互いに一刀しか放たない戦いは些か見劣りするものかもしれない。だが、断じて否。こちらはいうなれば秘技という名の曲芸を魅せあっているだけに過ぎない。それに比べればなんて純粋でなんて至高。究極に近づくほど陳腐なものに成り下がる。ああ、それもまた事実なのだ。故に、こちらはこちらで秘技を魅せあおう。

「ならば、こちらも決着をつけるとしようか」

そう言ってメルクリウスはこれまで以上の攻撃を仕掛けるために動き出す。また、アグレドも徐々に戻していた本来の体を完全に戻そうと動き、その一撃で総てを消し去らんと構える。頭が一つ失ったところで今の彼には対して関係がない。所詮失ったのは一つの世界に、一つの覇道、一つの理。その程度、己の中央に座す四つの理、己の世界、己の覇道を前には意味のないものだ。

「拭えない既知も大望抱く未知すらも消え去れ。お前の時代はこれで終わるんだ。まあ、最後まで友として付き合ってやる。それで満足しろ」

「ぬかせよ、私は死なん。死ぬのは貴様だ、アグレド。私の既知に終わりなどありはしない。私を認めたいというのなら、私の望む、女神の輝ける新世界を到来させろ」

彼が悪魔である以上、神に勝つという筋書きはありえない。だが今この場においては彼は揺らぎ、神とは断定できない。そして彼の本質、その化生は満天の星すら掻き消した存在だ。故に星の調律師と地を這う悪魔は互いが互いに弱点となりうる。
さあ、殺そう。死合おう。これが最後の一撃だ。共に、最高の一撃を放つがために世界すらも揺るがす。

「「行くぞォォ―――!」」




*****




メルクリウスとアグレドが殺し合う一方で、こちらの決着が付いた。方や受け入れるしかない致命傷を受けており、方や鮮血を舞い散らせながらも憮然と立つ。
そう、勝ったのは――――――

「やはり……というべきか…」

「―――――――」

蓮の刃は首に食い込んでいた。皮を確実に裂いており、鮮血を吹いていた。だがそこまで。肉を完全に切り裂き、骨を断つまでには至らない。

「何か、迷いでもあったかね?僅かだが、届かんぞ」

そして一方で、ラインハルトの刃は、

「ぐッ!?」

「私の、勝ちだ―――」
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