第二幕その二
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れを拒絶した。
これに対してカール五世も断固たる処置をとらざるをえなかった。彼を法律の保護外に置いたのである。これは生命を保証しないということであった。ルターはそれにも臆するところがなかった。しかし絶体絶命であることは事実である。そんな彼に手を差し伸べる者が現われた。
選帝侯の一人ザクセン公爵である。彼は以前よりハプスブルグ家の権限が強まるのを好ましく思っていなかった。その為ルターを匿ったのである。
ルターはそこで聖書をドイツ語に翻訳した。それまではラテン語で書かれているものだけであったが彼はより多くの人が聖書を読む為に翻訳したのである。そしてそれをグーテンベルクの金属製の活字印刷が広めていった。これが大きなうねりとなる。
やがてルターの教えを信じる者達が立ち上がるようになった。そして戦争を起こした。ドイツ農民戦争である。
ルターは最初はそれを指示していた。だが農民の行動がこれまでの摂理を乱すものだと批判するようになった。これはこの戦争の指導者トマス=ミュンツァーの主張をルターが過激過ぎると判断したからだという。彼は農民を抑えるように主張した。それがルターの限界だったかも知れない。しかし彼の果たした役割は大きくその考えに賛同する者が多く現われたのである。
カルヴァンもそうであった。彼はスイスで活動を続けたがその主張はルターよりも過激でかつ厳格であった。
予定説、人の運命は神によって既に定められているというものである。これはさしものルターも途中でその主張を撤回せざるをえない程のものであった。何故ならこれでは救いなど語れなくなるからだ。
しかしカルヴァンはこう言った。人間は与えられた仕事を真面目に働けばよいのだと。それこそが神の意志であると。それが出来ている人間は救われているのであると。
これはこうも解釈できた。蓄財はいいことだと。カルヴァンはそれを肯定した。働いて金を稼ぐことの何が悪いのか、と。
これは画期的な主張であった。それまでキリスト教においては蓄財は悪と考えられてきた。スコラ哲学を大成させたトマス=アクィナスはこれを罪悪とは考えなかったが大方はそうであった。そうした考え方を一変させたのであった。
この考えは都市の商工業者に支持された。そして彼等はカルヴァン派に改宗していった。
フランドルは商工業の発達した地域である。ならばカルヴァン派が増えるのも当然であった。こうして彼等はスペインのカトリックとは考えを異にするようになったのである。
これに対しフェリペ二世は強硬策に出た。生真面目で潔癖症なところがある彼はそれを許さなかったのだ。ハプスブルグ家の者としてもである。彼等はカトリックの擁護者、神聖ローマ帝国皇帝家なのだから。
フランドルの弾圧は熾烈を極めた。それに対しフランドルの者達も徹底的に戦った。こ
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