一話〜生還〜
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ただっぴろい草原。その奥に見えるは背の高い木々が生い茂る、いわゆる森。特に上層というわけでもないフィールドの、特に何という事もないそんな一角。
そこに二つ、普通ならありえないほどの速さで走るプレイヤーの残像と、それにぴったりとはりつく無数の小さな影を、かろうじてながらも認めることができた。
「い、いい加減にしてくれ!いつまでついて来るんだ!?」
疾走する残像プレイヤーの名前は、キリトといった。あるいは《黒の剣士》、《ビーター》と言ってもまだ通じるだろう。他にも色々と通り名はあるが、そんなことはどうでもいい。
「な、なんとかあの町まで……くそッ!間に合うか……」
彼は今、追われている。相手はもちろん、後ろにはりついてくる小さな影。
念のために言っておくが、キリトは攻略組だ。そして現在の最前線はここよりもはるかに上の層、モンスターもキリトのレベルに合うはずもない虫型のやつらがほとんど。さらに、自慢というわけではないが十秒ごとにHP(ヒットポイント)が自動で回復する戦闘時回復スキルも習得している身であるため、発動している限りモンスターに集団リンチされようとも死ぬことはまず無い。
にもかかわらず、俺、キリトがこんなにも必死なのにはもちろん理由がある。
それは――
「このハチ!なんで攻撃されたところが腫れるんだ!」
普通、モンスターなんかに攻撃されると、その攻撃力と自らの防御力によってHPが削れ、その量に比例し、不快感が発生する。例外として、《麻痺》や《毒》などのデバフを食らうこともあるが、それはあくまでステータス上の状態異常や感覚でしかなく、いかなるものでも第三者から認識することはできない――はずなのだ。
だが、どうやらこのハチの攻撃はその概念からは除外されているらしい。
指が腫れた。
状態異常のアイコンが無いことやダメージを受けていないところを見るに、そういった効果は無いようだが、なんせこのSAOにおいて初めての体験である、「カラダの変形」という現象が自らの身に起こったのだ。
それに加え、小さいころの自分が巣をつついて案の定、蜂に追いかけ回されるという映像がさっきからずっと脳内でフラッシュバックされ続けている。
パニックを起こして、殲滅や転移結晶で脱出という手段を思いつけないのはもはや自然なことだろう。
だがまあ、パニックを起こしていると言っても目標に向かって闇雲に突っ走っていればいずれ辿り着くわけで、目分量で100メートルと少し、自分と町の門との距離がそれくらいまで縮まり、内心でホッと安堵のため息をついたまさにそのとき、悪夢は再来した。
きゅいーん
今までハチの羽音しかしなかった背後に鳴る、一筋の不快な異音。
自分の指が腫れる、まさに直
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ