暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 赤いプレイヤーの日常
一話〜生還〜
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うとのんびり地面を這っているわけにもいかず、俺はよっこらせと立ち上がると、とりあえず、体のあちこちをさわってみた。
 もし刺されているのならすぐわかるはずだ。ちなみに、すでにできてしまっている指の腫れ物の大きさは、ひとまわり小さなゴルフボール。


「………」

 かなりの時間をかけてあちこちさわりまくったが、体に違和感はない。外傷も何もない。
 これは……無事、生還しました、と言っていい状態なのだろうか。

「……助かった……のか……俺」

 急激に安堵がこみ上げてくる。

「そうだ、助かったんだ」

 そう呟いた瞬間、俺の体はある一つの欲求を覚えて疼いた。
 その欲求とはすなわち、特大のため息。
 すうーーーと、音を出して肺の許す限り空気を吸い込む。あとはこれを思い切り外に吐き出すだけ。それでいくらか楽になれるだろう。
 ――と、まさに息を吐き出そうとしたその時、
 ピローン
 そこまで聞く機会のないメッセージの受信音。不意を突いて聞こえてきたその音に、俺のため息は、溜め込んでいた空気を飲み込むという形で中断されられた。

「……タイミング悪すぎだろ」

 ぼやきつつ、俺は右人差し指と中指をそろえ振り下ろしてからメニューを出現させ、操作するとメッセージウィンドウを呼び出した。
 誰の仕業なのか、見当がつかないわけではない。実際、俺に送られてくるメッセージのほとんどがある一人のプレイヤーのものだ。恐らく今回も……

「……やっぱりな」

 思った通り、そのプレイヤーからだった。
 みごと正解した自分に心の中で拍手してから、すぐにそのメッセージのタブをクリック。たちまち、様々な文字が連なった四角のウィンドウが出現した。
 相変わらずのかざりっけのない文面だが、そんなことにはもう慣れた。というよりも、そんなことは気にするだけ野暮だ。
 世の中には、このアインクラットという世界において絶対的に少ない女性プレイヤーであり、なおかつかなりの美人で、しかも攻略組でも最強と呼ばれるギルド、「血盟騎士団」の副団長という、パーフェクトな経歴をお持ちでいらっしゃるこの有名プレイヤー、アスナから、メッセージをいただく事を生涯の夢としているやつらもたくさんいるのだから。
 というようなことを妄想しつつ、俺はこのメッセージを読み終えた。内容は、要約すると「会って話がしたい」というものだった。

「………」

 何故だろう。顔がにやける。
 ともかく、急いで行動を開始せねばならない。なんせ指定された時刻まで十分もない。そんなに急がなくてもいいじゃないかと、会って文句を言ってやりたい気もするが、そこは我慢。

「……はあ、仕方ないな」

 しばらくの思考の後、俺はそうため息をつくと、腰のポーチから一つ、
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