第二幕その一
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は消えていった。
「まるで私に語りかけているようだ。何と無気味な声だ」
彼は声を耳に留まらせたまま呟いた。
そこに見習いの若い僧侶に導かれて一人の青年がやって来た。
「殿下、こちらにおられましたか」
「ロドリーゴ・・・・・・」
カルロはその青年の方を振り向いた。
その青年はカルロとは対照的に大柄で筋肉質であった。顔はやや細長いながらも彫りが深く整っている。長く黒い髪を帽子の下にまとめている。その瞳は黒く力強い光を放っている。
青い絹の豪奢な服に身を包んでいる。彼の名はポーザ侯爵ロドリーゴ、フェリペ二世の腹心にしてカルロの幼い頃からの友人でもある。
「どうしてここい!?」
「殿下にお話したことがありまして」
「そうか」
彼等は若い僧に金を手渡しその場を去らせた。その場には二人だけとなった。
「そして話というのは?」
カルロはロドリーゴに対して問うた。
「殿下がお悩みとお聞きしましたので」
ロドリーゴは謹んで答えた。カルロはその言葉に表情を暗くさせた。
「・・・・・・知っていたのか」
彼は顔を下に俯けた。
「何が理由かまでは存じませんが殿下のご様子から」
「否定はしない。だが訳は聞かないでくれ」
「はい」
ロドリーゴは答えた。
「話はそれだけではないだろう?君も何か言いたそうだ」
カルロはロドリーゴの顔を窺って言った。
「はい、殿下に是非ともお話したことがありまして」
ロドリーゴは表情を深刻なものにした。
「何だい?」
「私は先日までフランドルに行っておりました」
「それは知っているよ。活躍したそうだね」96
彼は将軍としても有名であった。
「はい、ですが・・・・・・」
ロドリーゴは自身の武勲を称えられても表情は暗かった。
「一体どうしたんだい!?そんなに表情を暗くさせて」
カルロは彼のあまりにも冴えない表情を見て自分も表情を暗くさせた。
「・・・・・・殿下、今フランドルで何が起こっているかご存知でしょうか」
「我がスペインに対する反逆だろう」
彼は率直に言った。そう聞かされていた。
「・・・・・・ちがいます」
ロドリーゴは暗い声で言った。
「では一体何なんだい!?私には君の話がよくわからないのだが」
「今フランドルは地獄と化しています。我々の弾圧によって」
「何っ、それは本当かい!?」
フランドル、今はオランダと呼ばれる地方は婚姻政策によりハプスブルグ家の領地であった。かってこの地はフランスと所有を巡り激しく対立したこともある。商業の栄えた地であり今はスペイン領でありスペインの重要な税の収入源であった。
商業が盛んな為商工業者の力が強い。ここで宗教の問題が絡んでくる。
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