第四十一話 鍛えた結果その十四
[8]前話 [2]次話
「びっくりするから」
「じゃあ一回観てみるわね」
「他の国の映画とか観ると色々文化の違いが出るけれど」
それはドラマも同じだというのだ。
「凄いからね」
「わかったわ。観てみるわね」
「うん、そうしてみて」
「二人で観ようね」
樹里はささやかな反撃を仕掛けた。
「そうしようね」
「二人でって?」
「私のお家でね」
微かだが思わせぶりな笑みでの言葉だった。
「そうしない?」
「村山さんのお家でっていうと」
「二人で観ましょう」
「いや、村山さんのお家だと」
樹里の反撃は失敗に終わった。上城には効果がなかった。
「おじさんや弟さんがいるから」
「ええと。つまりは」
「つまりはって?」
「だから。私の部屋でね」
反撃は失敗に終わってもそれでもだった。樹里は何とか食い下がりそのうえでまた彼に仕掛けたのである。
「一緒に観ましょう」
「パソコンで」
「だから。テレビで観ないじゃない」
「言われてみればそうか。検索するんだし」
「そう。だから二人でね」
「わかったよ。そういうことだね」
上城がわかったのは表面的なことだった。それだけだった。
「じゃあ一緒にね」
「そう。一緒にね」
何とかだ。樹里は話をこぎつけたことに内心安堵しながら応えた。
「観ようね」
「うん、それじゃあね」
「二人でよ」
かなり切実に言う樹里だった。
「わかってくれた?」
「わかってるよ。安心して」
こう返す上城だった。
「充分にね」
「そうかしら」
「うん。だからね」
「だといいけれど」
樹里はいささか不安な顔で述べた。
「本当にね」
「何かあるみたいな喋り方だけれど」
「別に」
樹里はこのことは隠した。
「何もないから安心してね」
「そう。だったらいいけれどね
「ええ、それじゃあ今度ね」
「私のお部屋で台湾ドラマね」
「それ観ようね」
こうした話もしたのだった。二人は今は学生としてそれなりに学生らしい話をした。それは上城にとってもいい息抜きになった。戦いの合間の。
第四十一話 完
2012・7・30
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ