第十七話
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第十七話 気の弱い犬
シャム猫はブリアードに対して言った。
「ねえワラビ」
「何?」
「あんた大きいんだから」
こうその犬ワラビに言うのだ。
「もっと堂々としたら」
「堂々?」
「そう、堂々とよ」
そうしろというのだ。
「もっとね」
「そんなこと出来る筈ないじゃない」
ワラビは困った表情をそのむくむくとして目がかなり隠れてしまっている顔に浮かべてそのうえでシャム猫に返した。
「私が」
「あんた気が弱いからね」
「自覚してるわ」
自分でそのことをだというのだ。
「自分のことだから」
「自分のことがわかってるのはいいことよ」
「そうよね、私は自分が強いとか思わないわ」
ワラビは自分の方を振り返って前を進む猫に言う、二匹で縦に並んで進みながら話しているのだ。
「むしろ弱いわよ」
「そう思ってるのね」
「ケムンパスだってそう思ってるでしょ」
シャム猫の名前を呼んで言う。
「そうでしょ」
「気は弱いわね」
ケムンパスはこう限定した。
「あんたの気はね」
「ほら、弱いでしょ」
「気は弱いけれど」
それでもだというのだ。
「力は強いじゃない」
「力なのね」
「そうよ。身体が大きいだけあって」
確かに大きい、ドーベルマンにも引けを取らない。
「その力を発揮すればね」
「問題ないっていうのね」
「気の持ちようよ。大人しくて優しいのはいいけれど」
ワラビの性格の特徴である。
「もっと気をしっかりと持ってね」
「力を出せっていうのね」
「そう、あんた力は強いのよ」
だからだというのだ。
「そんなにおどおどしないで堂々としなさいって」
「けれどここはじめての場所ではじめて見る人達ばかりだから」
「怖いのね」
「ケムンパス、頼りにしてるわよ」
自分よりずっと小さい猫に言うのである。ワラビはおどおどとして周りを警戒しながらケムンパスの後ろをついていく。
第十七話 完
2013・3・13
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