ALO編
episode2 思い出の行方
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マのように絵になる様をちらりと見やって笑いながら、ポリゴンが霞むほどの速度で足を動かす。
彼女の顔には、驚き……かつての俺にとっては見慣れた表情が張り付いている。
まあ、それはそうだろう。
俺は今、彼女が空を飛ぶのと同じスピードで地を駆け抜けているのだから。
(そういや、他人のその表情、久々に見たな……)
ふと思い出すのは、いつか駆け抜けた四十三層のフィールドだ。
俺とキリトの二人のデッドヒートを、皆が今のピンク女とまったく同じ表情で俺達を見つめ、助け、応援してくれていた。耳に痛いような街のざわめき、それが一瞬止まってからあがる……いや、俺たちがあげさせる歓声。そんな俺達に満面の笑みを向ける、人込みの中でも一際輝いて見える、あの笑顔。
あの日は、本当に楽しかった。
「おっと」
ちょっと気を逸らしたために縺れそうになった足を立て直す。
そうそう、そう言えばモモカは、なんと随意飛行ができるようだった。彼女の瓶底メガネの弱そうな見た目によらず、なかなかの熟練者というわけだ。ちなみに彼女によると、シルフやケットシーのスピード、サラマンダーのパワーのような補正の無いプーカは基礎戦闘力では他種族に劣るらしい。必然主に戦闘用の技術である随意飛行までもをマスターするプーカは少ないのだそうだ。
「だからってキミみたいに走れる人見たことないけどねー! なんでそんな走れるのー!」
「走れるから、走れるんだよ!」
草原地帯を失踪しながら、その体をちらりと見やる。
瓶底メガネのピンク女(思えばこの呼称は結構失礼なのだろうか?)、モモカ。昆虫系のシンプルなデザインの羽だが、音楽妖精にふさわしい美しい高音を響かせているその姿は、いかにも妖精といった風貌だ。現実だと引くだけだろう派手なピンク色の髪と、そんな派手さとは裏腹に地味を絵にかいたような瓶底メガネのギャップも相まって、独特の魅力がある。
のだが。
「……街が、どうかしたのかよ?」
「っ、ううん、なんでもないよー! 早く行こー!」
なぜかその表情は冴えない。
首都が近づくにつれて、無視できないレベルで顔に陰が差していく。
(……間違いなく、なんかあるんだろうな……)
俺の勘は告げている。
そもそも彼女の行動にだって、不可解な点がないわけじゃない。戦闘には向かない音楽妖精が、何故あんなところにいたのか? そもそも熟練者の代名詞と言える随意飛行が出来るほどのキャリアを持ちながら、彼女は四人に囲まれている時一切の武器を持っていなかった。ちょっと俺も冷静では無かったために記憶が曖昧だが、思い返せば確か彼女が持っていたのは腰に差した横笛だけだったはずだ。
そしてどうして首都が近付
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