12 「師弟」
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面にあった説明文には、『極限まで鍛え上げた飛竜刀に、銀火竜の魂を注ぎ込んだ剛刀。輝く獄炎が一切を灰燼に帰す』とあるわ。骨刀【犬牙】の派生…って、リーゼ、あんたの刀じゃない。そっから強化していって、確か、飛竜刀【双紅蓮】から銀火竜の素材だけじゃなくて、火竜の紅玉も必要じゃなかったかしら」
「ああ」
「紅玉!?」
「飛竜の体内で形成される結石の一種だと言われているけど、正確なところはわからないわ。滅多にお目にかかれるものじゃないから……あんた、激運のスキルでも持ってるの? 銀火竜といい、紅玉といい…最早幻といってもいい代物よ、この太刀。はぁ…このフォルム、冷ややかな燻し銀……素敵」
恍惚とした表情で知識を披露し続ける。よくまあ強化に必要な素材まで覚えていることだ。そもそも太刀の説明文ってそんなに小っ恥ずかしいものだっただろうか。苦笑したまま先に進む。
エリザの説明は続いた。
「もちろんリオス種の素材を使っているから、斬撃時に火を放つの。おまけに銀火竜の素材がふんだんに使ってあるから、重量もあるから一撃の攻撃力が他に比べて高いのね。ただ、あまりにも素材が稀少すぎて、図面はあるものの作った経験がある人がほとんどいなくて、多分、【双火】とかと同じ作りだと思うんだけど……」
ぶつぶつと専門用語を交えながらナギの背にある太刀を追いかけるエリザ。ナギについて言っているというよりは餌に釣られる調教していないアプトノスを連想させる。竜車でアプトノスがまだ御者の思い通りに行かないときや機嫌が悪い時は、目の前に釣竿で餌(大抵ニンジンだ)を釣って走らせるという強行手段があるのだ。まさにそれのようだった。
「…ここまでは河沿い。そこに大きな倒木があるだろう?」
「はい」
「あれを目印にするといいよ。手前の藪をちょっとのけると獣道があるから…ほら」
エリザの代わりに返事をしたリーゼは、ほうほうとうなずいてその背に続いた。
暫く歩くと、だんだん急な上り坂になってくる。最後の方は山登りのような斜面だった。渓流の中でも家は丘の上にあるらしい。以前リーゼが来た時はそれどころではなく一生懸命だったから気づかなかった。
それでも疲れがこないのは、ナギがあえてゆっくり歩みを勧めているからだとわかったのは、家についてからだった。思ったより陽が昇っている。そろそろ昼時だろうか。
「……ついたよ」
突然開ける視界。リーゼロッテにとっては2度目の訪問となる。デュラクは庭の隅で静かに寝ていた。
「疲れてる?」
「いいえ、全然!」
「まったく問題ないわ」
「じゃあ、早速始めようか」
「あの」
太刀を家の中においてこようと背から外したナギに、リーゼロッテが声をかける。どうしても気になって思わず引き止めてしまったのだ。
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