第一幕その三
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
いことか」
「スペインに絶望はありません」
そう、この時まで彼は絶望というものを知らなかったのだ。
「これは私が誓って言います。殿下は貴女様を深く愛されることでしょう」
「何と嬉しいこと」
「はい、そしてこれがその証です」
カルロはそう言うと懐から小さな箱を取り出した。それは宝石箱であった。
「それは・・・・・・」
「殿下からの贈り物です」
彼はそう言うとその宝石箱を手渡した。
「この中に殿下の似顔が入っております」
「この中に・・・・・・」
エリザベッタはそれを恐る恐る手に取った。
「どうぞ」
カルロの言葉に押され手に取った。そしてゆっくりと開いた。
「あ・・・・・・」
エリザベッタはその似顔を見て絶句した。何とそこに映っているのは今目の前にいるその若者であるのだから。
「私がそのカルロです」
カルロはここでようやく名乗りをあげた。
「お慕いもうしております」
そして片膝を折ってエリザベッタの前に跪いた。
「貴方が・・・・・・」
エリザベッタは震える声で言った。
「はい」
カルロは跪いたまま答えた。
「これこそ神の御導き」
エリザベッタは声を震わせたまま言った。
カルロはその前に跪いたままである。一言も語ろうとはしない。
「立って下さい」
彼女はそんなカルロを立たせた。カルロはそれに従い立ち上がった。
「まさかこの様なところで出会うとは。このフォンテブローの森には一つの言い伝えがあります」
「それはどのような?」
「この森ではじめて出会った男女は永遠の愛を結ぶという言い伝えです。そして私達は今ここではじめて出会いました」
「それは・・・・・・」
カルロはその話を聞き顔を明るくさせた。その時大砲の音が聞こえた。
「ムッ」
「あっ」
二人はその音が鳴った方に顔を向けた。
「祝砲ですね」
「はい」
エリザベッタはカルロの言葉に頷いた。見れば宮殿のテラス一面に明かりが灯っていく。闇夜の中にテラスの色とりどりの光が映し出される。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ