家出姫
家出姫
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三重城SIDE
朝の静かな三重城の廊下を歩くエリザの侍女。彼女の使命はエリザの補佐、という名の世話係である。今日も世話のかかる姫をお起しに彼女の部屋に赴く。
「失礼します。」
主の微睡を邪魔せぬようそっとドアを開け、彼女の眠る天蓋付きベッドに近づく。
「エリザ様、朝でございます。」
返事がない。余程ぐっすり眠っているらしい。必ず定時に起きることになっているため侍女は腕を彼女に伸ばしゆすろうとするが、
「エリザ様?」
主がいるはずのふくらみを押すと有るはずの反応が返ってこない。
不思議に思って布団をめくると、
「エリザ様が、いな、い!?」
膨らみの正体はこの部屋においてあったクッションだった。
「ひ、姫様が!皆の者!出会え出会え!」
侍女は大声をあげながらクスィー伯の下へ駆けていった。
その日の午後、カズヤの家にクスィー伯の使者がやってきた。
「エリザが行方不明?」
「はい。」
とりあえず立ち話もなんだから応接間に通しセリナにお茶を出してもらってもてなす。
「エリザ様はあなた様に好意を寄せておられましたのでまさかと思いまして。」
「いくらなんでも。オレの家の場所を知っているのですか?」
「あの方の力をもってすれば無理ではありません。」
「マジか。」
オレは彼女を少し見くびっていたな。
「それで、オレにどうしろと?こっちは白光教会討伐に準備に忙しいんだが。」
「承知しております。こちらでも捜索しておりますが我々でも手の届かないところがございます。」
「つまりオレに裏を探せと?」
「そういうことです。」
「面倒なことを。」
出されたお茶を一口飲み使者の言葉を噛み砕く。
事実オレは多少裏の顔を持っている。奴隷売買、麻薬取引、裏情報。特に人身売買に精通している。
過去に人買いに捕まったことがあったが、チートな能力を駆使して脱出、俺を捕まえた人買いを制圧、命乞いしたそいつらを服従させ情報屋として使っている。勿論人買いなんかさせてない。そもそも人身売買は違法だ。
「わかった。こちらでも探ってみよう。」
「ありがとうございます。要件はそれだけです。では失礼します。」
失礼な奴だ。オレの家の中で転移魔法使いやがった。立派なマナー違反だぞ。
魔力の残滓が風に流され応接間に静寂が訪れる。
「……。ねぇ。」
「ん?」
オレの後ろで会話を聞いていたセリナが口を開いた。
「エリザって誰?」
笑顔が素敵なんですけど目が笑ってないんですよね!?
「ええっと、その、お姫様?」
「へぇ、私が心配している間に仲良くなったの?」
「仲良くなったというか一方的に婚約さ
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