第二十一章
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い。
――どうでもいいじゃない。確認は後♪後♪
早く殺そう。あいつを殺しちゃおうよ。
うん、でも…
なんかね、あの信号…ちょっと、あったかい気がするの…
――言ったでしょ。お楽しみは、後にとっておこうよ♪
早くしないと、逃げちゃうよ。
ねぇ、ちょっと聞いていいかな…
――後、後♪
あいつを蒸し殺したら、ぜーんぶ聞いてあげるから♪
ううん、今じゃなきゃ駄目なの。
――どう、したの?
……私に話しかけてくる、『あなた』は一体、だれ……?
自分で口にして、びっくりした。
そうよ。だれなの?…なんで私の中に、もう1人いるの?
私の体が、酷く黒く汚れているのは、一体なに?
私と混じりあっている、これは一体…なに?
「これ…一体…なんなの…?」
「やっと状況を把握したのね」
聞き覚えのある、凛とした声が後ろから聞こえた。…誰の、声?なんで私は、この声に聞き覚えがあるんだろう…?
「11101101100110010110011。それだけ、預かってきた。…あなたのマスターから」
「ますたー…?」
ますたー…マスター…
……ご主人、さま?
「ご主人さまは、殺されて…」
「思い出しなさい。あなたの本当のマスターは、誰」
「私の…ほんとうの…ご主人さま…」
――こいつ。
「あなたの意識を汚して、マスターの記憶を奪ったのは、誰」
――あと、少しなのに。
「ご主人さまの記憶を、奪ったのは…」
――消してやる。
「ハアァァァルウゥゥゥ!!ぅお前から消してやるぅ!!!」
ぷつり、と不吉な音を残して、携帯画面が光を失った。紺野さんの携帯は一瞬熱くなって、程なく細い煙をあげた。
「……ハル!」
呼びかけても無駄なことは分かっていたのに、つい声が出た。…賭けは失敗したんだ。ビアンキは僕の呼びかけに応じることなく、ハルを消した。
…僕の呼びかけに、応じることなく。
膝から崩れ落ちるように、座り込んだ。肩に生暖かい雫が数滴、垂れてくるのを感じて首をあげる。…頭上の空調に、無数の結露が見える。
やがて湿り気を含んだ生暖かい空気が、やんわりとつむじを打ち始めた。…あぁ、ビアンキが僕を殺す準備を始めたんだな。と直感した。
「…きっついなぁ…」
そんな呑気な感想がもれた。1人で死ぬのは、きつい。身勝手な話かもしれないけど、ハルでもいいから、死ぬまで傍にいて欲しかった。
「……柚木」
まだ、生きてるだろうか。生きているんだろうな。
携帯掛けたら出るかな…なんて頭をよぎったけど、やめておいた。寂しいから僕の断末魔の声を聞かせるなんて、身勝手な話だ。僕はゆっくり目を閉じて、柚木の面影を精一杯頭に描いた。…惜しいな、付き合って3
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