暁 〜小説投稿サイト〜
くらいくらい電子の森に・・・
第二十一章
[5/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、鼻先に突きつけられると予想以上に切ない。伊佐木が最終的に鉄の意志を曲げて、昔語りを始めた気持ちが分かる。…ビアンキは僕をどうやって殺すつもりなのかな…
「2人っきりになっちゃったね、ハル」
紺野さんの携帯に呼びかけてみる。人間じゃないことは分かっていても、言葉を交わせる相手がいることはありがたい。…やがて、青い画面にハルの肢体が浮かび上がった。
「マスターから許可は受けています。どうぞ」
「…制御室に着いた。端末は、使えなくなっている。…いい方法は、ないよね」
ダメモトで聞いてみた。…考えてみれば、ハルだって流迦ちゃんと同じ思考回路を持っているんだから、ハルが思いつくような対応策は、ビアンキがとっくに封じているはずだ。数秒の空白を経て、ハルが口を開いた。
「病院のシステムを制御する方法は、完全に断たれています」
白いため息が、たらたらとこぼれた。…犬死に決定。
「はぁ…そう」
「一つ、確認したいのですが」
「…なに」
「あなたの目的は、病院システムの制御ですか」
ふいに妙な事を聞かれ、面食らう。
「…どういうこと」
「ビアンキへのアクセスではなく、病院システムの制御ですか」
「――あ」
目が、覚めた気分だった。
「――最期に、ビアンキに会いたい。会って伝えてやりたい。…僕はここにいるって」
ハルの顔が、ほんの少し微笑んだように見えた。
「了解しました。…優先順位の変更をいたします」
「優先順位…?」
「マスターは、私の存続を第一優先事項に設定しました。…マスターの許可により、今後は、ビアンキとのアクセスを第一優先事項に設定します」
「それじゃ…ハルが…」
「――これより、この端末を常時オンラインにします。そしてビアンキからの接触を待ち、可能であればアクセスを試みます」
僕に最後まで言わせず、ハルはオンライン接続の準備を始めた。
「一つだけ、了解しておいてください。…おそらくビアンキは、他の個体との接触・融合により、まったく別の存在と化しています」
「………」
「接触出来たとしても、網膜識別が出来ない状況であなたをマスターと認識できる可能性は…ゼロに近いと思われます。予測できる反応は、私達の位置補足と攻撃。それでも、接触を試みますか」
ハルは、淡々とそれだけ伝えると、僕の反応を待つようにじっと見つめ返してきた。…そんなことは分かっている。僕がどれだけビアンキの事を思っても、『網膜』という絶対的なよすががない。それだけで僕はビアンキを取り巻く世界の一部…ビアンキの敵だ。人間の心を持って生まれたビアンキでも逃れられない、プログラムとしての本分。分かっているけど、でも…。
「…僕たちは、『網膜』がないと分かり合えないのかな」
「………」
「いっぱい、話をしてきた。ビアンキの好きなものも嫌いなものも、ちょ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ