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くらいくらい電子の森に・・・
第二十一章
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換えるか…それは、持って生まれた性質ってより、そいつ自身の経験の方が重く影響するからな』
「………」
『だが、その思考回路を直接トレースしたMOGMOGは、どうだ?』
「…どうって」
『あー、記憶や経験なんかのな、バックボーンはないが、その経験を基にして作りあげた思考回路を、そっくりトレースしてるんだ。同じ状況に出くわせば、かなり高い確率で本人と同じく反応するんだぞ。…あるイミ、クローン以上に《本人》に近いんじゃねぇか』
――そう、きっとその通りなんだろう。
多少性格の違いはあるみたいだけど、MOGMOG達と流迦ちゃんはどこか似ている。例えば、MOGMOGの特徴である収集癖。…流迦ちゃんも、小さい頃は川原に落ちてる綺麗な石とか集めるのが好きだった。大きくなると、それが消しゴムとか携帯ストラップとかアクセサリーに変わっていったけど、何かにつけ集める癖は抜けなかった。
――それに、大事な人から引き離された時の反応。
流迦ちゃんもMOGMOGも、壊れてしまった。
だから壊れた自分と同じように、大事な人がいない世界を壊そうとした。…大事な人を奪われた恨みのベクトルを、自分を取り囲む世界そのものに向けて。
『答えになったか』
「…ありがとう、ございます」
『――あいつ、死んだのか』
答えられないでいると、そうか…と一言だけ残して、ふいに通話が切れた。ちゃんと説明するべきだったかな、と少し後悔したけど、掛け直さなかった。時間の差はあっても、紺野さんが死んでしまうことには変わりはないんだし。
「――もう、いいですか。入りましょう」
少し声を震わせて制御室に踏み込もうとする八幡を、押しとどめた。
「もう、いいんだ」
「え?」
「ここまででいいよ。――なんとなく、分かった」
きょとんとしている八幡に、今の僕に許される程度の笑顔を見せた。
「この先に、あなたは入っちゃいけない。――僕だけが、ここに入るべきなんだ。ここから防火シャッターまでは空調はないから、ここにいて殺されることはないと思います。…まずは僕が入ってみるから、しばらくここで様子を見てください」
「――でも!」
八幡が僕を見つめ返す。長いまつげが乾ききっていないのに、また泣き出しそうな顔をしている。
…あの夜も、思った。月明かりに垣間見える、長いまつげと黒目がちな瞳が綺麗だな…と。
こんな時に不謹慎だけど、思わず見蕩れた。
「なんか、泣いてばかりですね…僕たちと会ってから」
自然に苦笑がこぼれた。
「本当…あなたたちと会ってから、辛いことばっかりです」
泣き顔のまま、とがめるように僕を見上げた。並んで立つと、八幡は思っていたよりも華奢で小さい。…もしも僕が柚木と出会っていなかったら、僕が好きになったのは、きっとこういう人なんだろうな。
「…姶良さん、何か隠して
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