第二十一章
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「柚木になって…ご主人さまにオムライス、作るんです。あと、一緒に歩いたり、手をつないだり、雨の日には同じ傘を差したり…」
また僕の胸元に顔を埋めて、小さく呟いた。
「柚木に、なりたかった…です」
ビアンキの輪郭が、徐々にゆらいできた。僕は息をつめた。ビアンキが崩れないように。彼女はゆっくり首を傾げて僕を見上げた。
「頭、撫でてほしい、です」
「……でも」
じっと見つめてくるビアンキに根負けして、僕は出来るだけゆっくりと腕を持ち上げて、髪を撫でる。ビアンキは、気持ちよさそうに目を閉じた。…透明なビアンキの髪は、僕の手が触れた端からミルク色の霧と混ざり合って、溶けていった。
……ビアンキの輪郭も、少しずつ、ミルク色の霧に呑まれていった。
もう、おしまいなんだな。ビアンキ。
「おやすみなさい、ごしゅじん、さま」
ビアンキの、最後のカケラが霧に呑まれたあとのことは…よく覚えていない。
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