第六話 様なんて柄じゃねえ
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では自嘲(じちょう)していた。
一度見捨てようとしたことが、罪悪感として心に突き刺さった。
「は、はい! 本当にありがとうございますです!」
満面の笑みを向けてくる。
この笑顔を見れたことが素直に嬉しかった。
本当に見捨てなくて良かった。
「あ、私は……えと……クロリス。クロリス・フィル・トーキネスと申しますです」
「……長いな」
「あ、良かったらクロとお呼び下さいです」
「そうか、助かるよ。あ、オレは赤地……って、こっちではトウゴ・アカジだな」
「とう……とお……ご……」
「ああ、言い難かったらトーゴでいいぞ。そうだな、これからはそう名乗るか」
闘悟はうんうんと頷く。
「あ、はい。トーゴ様ですね」
……ん? 今確かトーゴ様って?
「あ、あのさ、その様は止めてくれ」
「何故なのですか?」
不思議そうに尋ねてくる。
闘悟は頭を掻(か)きながら答える。
「いや、そう呼ばれ慣れてねえし、様さんてつけられるほど偉くもねえし。できれば、呼び捨てか、トーゴさんとか、トーゴくんとかにしてくんね?」
「そ、そんな! 命を助けて頂いた殿方をそのような呼び方はできませんです!」
「……絶対?」
「絶対なのです!」
「……どうしても?」
「どうしてもなのです!」
どうやら、交渉は成立しないようだ。
闘悟は溜め息を吐く。
「しょうがねえな、んじゃそれでいいよ」
「あは! 良かったのです!」
嬉しそうに微笑むクロリスを見ると、呼び方なんてどうでもよくなった。
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