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ドン=カルロ
第五幕その一
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方とはこの世では永遠の別れ」
 彼女は言葉を替えてそう言った。
「ですが別の世界ではまたお会いしましょう。今度はこの世の惨たらしい運命などない心優しき世界で」
「はい」
 カルロはまた頷いた。
「私達はまた会うでしょう、そしてその時こそ永遠の愛を結ぶ時」
「ええ」
「また会う時まで」
 二人は手を取り合った。
「永遠のお別れを」
 そして手を離した。それが二人の別れであった。
 カルロは聖堂を出ようとする。そして行く先はフランドルだ。
 だがその前に影が現われた。不吉な影達であった。
「ム・・・・・・」
 カルロはその影達を見て腰の剣に手をかけた。
 それは異端審問官達であった。彼等はカルロを取り囲んだ。
「ロドリーゴの仇か」
 彼の目が光った。
「望むところだ、貴様等だけは神の裁きを受けさせてやる」
 そして斬りかかろうとする。だがその時だった。
「待て」
 そこであの声がした。
「あの時言った筈だ」
「父上・・・・・・」
 フェリペ二世が姿を現わした。
「フランドルに行くとなれば命はないと」
「貴方はまだそんなことを・・・・・・」
 カルロは顔に怒りをあらわさせた。
「言うな」
 王は一旦カルロから顔を外した。
「これは王としての勤めなのだ」
 そして再びカルロを見た。
「ロドリーゴをなくしておいてまだそのようなことを!」
「言うな!貴様には所詮王冠の重さがわからんのだ!」
「そんなものわかりたくもない!」
 カルロは言い返した。
「ロドリーゴがその為に命を捨てる位なら!」
「クッ・・・・・・!」
 王は言葉を返せなかった。ただカルロが睨むのを睨み返すだけであった。
「陛下よ」
 そこで別の声がした。大審問官である。
「今こそ王の尊厳を確かなものにする時ですぞ」
 彼はやはり左右を他の者に支えられながら出て来た。
「そのような者の力を借りなければいけない王冠なぞ・・・・・・」
 カルロは大審問官を睨みながら言った。

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