妄想と戯言
妄想
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うした?」
「俺なんか死んでしまえばよかったんだよ! 家族に見捨てられた俺なんてっ!! っ!」
「あー……そりゃどうしてなんだ? よかったら俺に話してくれ」
そう言って男は一夏の右側に立っていたのにわざわざ左側に移動してから一夏の側に座った。
ふと、疑問に思った一夏は男を見ると男の左側の異常に気付いた。
「っあ……。お兄さん、腕が……」
左腕が肩から下まで根こそぎ消えているのだ。もし、先程の事で受けてしまった怪我ならば命にもかかわることは一夏の目からでも明らかだった。
俺のせいでこの人が死んでしまう……。そんな自己嫌悪からまた心の中がぐちゃぐちゃになる一夏だったが、男の苦笑染みた笑い声で我にかえった。
「腕……? ああ、これのことね。左腕は大分前の怪我だから心配しなくていい。それに俺がこの程度の奴らに負けること自体が有り得ない」
「よかった……」
「クク……優しいねえ。まあ、そんなことよりも話してみな。一体少年に何があったのか」
そして、何も疑うこともせずに一夏は事の顛末を話した。
世界最強の証である戦女神【ブリュンヒルデ】の称号を持つ織斑千冬の弟であること。姉がIS世界大会に出場する時に誘拐されてしまったこと。唯一の身内だからきっと助けにきてくれると思ったのに姉は構わず出場したということ。それが原因で先程殺されそうになっていたこと。
一夏は全てを話した。話していく内に自らを世界最強の弟だとしか見てくれないことに対する鬱憤すら、見ず知らずの他人に話していた。
男は話を聞いていく内に顔が険しくなっていったが、唐突に何かに気付いた様子を見せると険しい表情はなりを潜め、口元は微かに笑みを形作っていた。
「そうだったのか。……それで、少年は姉をどうしたいんだ?」
「姉……? 確かに姉さんはいつも忙しそうだったよ……。それでもきっと唯一の弟を見捨てることだけはしないと思ってたのに。俺が誘拐された時もきっと見捨てることはないと思っていたのに……。もう姉さん……いや、織斑千冬は……」
ボゴン
虚ろな目で話す一夏はその先の言葉を放つことが出来なかった。
唐突にされた男のデコピンにより頭が大きく仰け反ったからだ。
デコピンの癖にやたらと強い、額がへこんでしまったのではないかと思うほどの痛みに言葉もなく悶絶していると、ずっと聞き手にまわっていた男が口を開いた。
「少年。お前は少し考えが足りないみたいだ」
「考えが足りない?」
「これは俺の推論になるから必ずしも正しいと断言することは出来ないが、こう見ることも出来るぞ? お前の姉はお前の話から考えれば世界に大きな影響を与える程有名な人物。恐らく国はどんな方法を使ってでも欲しがるだろうな。だが、織斑千冬はミサイル二千発を一人で全て撃墜出来る
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