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ドン=カルロ
第四幕その七
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は首を横に振って答えた。
「君の熱いこの血、今こそ全て受けよう」
「有り難うございます・・・・・・」
 彼は力ない笑みで微笑んでそう言った。
「明日ユステの僧院へお向かい下さい。そこに王妃様がおられます」
 彼はここに来る前に既に王妃と会っていたのだ。
「王妃様は全てをご存知です。必ずや殿下をフランドルへお渡しなさるでしょう」
「そこまで手を打ってくれていたのか」
「はい・・・・・・」
 彼は弱々しく頷いた。
「それが私の務めですから」
 彼は言葉を続けた。
「そしてそこからスペイン、そしてフランドルは新生するのです。殿下の手によって」
「私の手で・・・・・・」
「そうです、私はそれを何時までも見守っていますよ、殿下の中で」
 彼はうっすらと微笑んだ。一言ごとに力が弱くなっていっているのがわかる。
「私は愛する殿下をお救いすることが出来ました。そしてそれによりスペインも、フランドルも救われる。それで本望なのです」
「ロドリーゴ・・・・・・」
「長い苦悩の人生でした。戦場で、宮廷で多くの血を見てきました」
 宮廷もまた権謀術数の中にある。彼は神聖ローマ帝国の大使を勤めていた頃やイングランドの大使を勤めていたことがある。そこで多くの血が流れるのを見てきたのだ。
「ですが最後に殿下にお会いできた。私の苦悩は殿下により救われたのです」
「私に・・・・・・」
「はい、その殿下の為に死んでいく、私は幸福でした」
「有り難う・・・・・・」
 カルロは泣いていた。
「泣かれることはありません、私達はこれでずっと一緒です」
 そして首のペンダントをとりカルロに手渡した。カルロはそれを受け取った。
「さようなら、ですが私は永遠に貴方の中に生きます」
「うん・・・・・・」
 カルロは頷いた。
「ですから悲しまないで下さい。私は貴方と共にありますから」
 そう言うとその目をゆっくりと閉じた。
「私は永遠に貴方と共に・・・・・・」
 そして静かに息を引き取った。
「ロドリーゴ!」
 カルロはその上に倒れ伏した。牢獄から悲しい慟哭が聞こえてきた。

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