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戦国異伝
第百二十一話 四人の想いその十一

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「それがわかっておられる方だから御館様なのだ」
「こうしたことでもすぐに全てを承知して下さる」
「そうじゃな。我が殿も同じよ」
 信長もまた然りだというのだ。
「その様なことでご立腹にはなられぬ」
「信長公もそうか」
「それだけの御仁か」
「そうじゃ。わしとて同じじゃ」
 そうだというのだ。
「わしは殿が好きじゃ。その殿は決して裏切らぬし」
「信長公も見抜かれる方」
「それでか」
「うむ、そういうことじゃ」
 こうした話をしてだった、慶次は笑顔で三度茶を煎れた、今度は四つの碗にそれぞれ煎れたのだった。
 阿国はその三度目の茶も飲みながら笑顔で言った。
「いいねえ、やっぱり」
「御主はこれからどうする?」
「あたしかい?」
「うむ、都に留まるか」
「そのつもりだよ」
 まさにそうだというのだ。
「歌舞伎をやっていくよ」
「そうか。その踊りもじゃな」
「ややこ踊りっていうんだよ」
 それが阿国の踊りだというのだ。
「あんたもやってみるかい」
「そうじゃな。面白そうじゃな」
「噂通り随分と好奇心があるね」
「ははは、そうじゃな」
 慶次も笑って阿国の今の言葉を否定しない。
「よく子供の様だと言われておる」
「童心だな」
 兼続がそれを聞いて言う。
「それだな」
「その様なことを平手殿達に言われておる」
 これはいつものことだ、慶次にあるのはそれだった。
「まさにな」
「そうであろうな」
「わしは大きな子供だと言われておるわ」
「言われてみればそうだな」
 兼続もその通りだと返す。
「御主はそれだ」
「うむ、そうした意味でもわしは不便者じゃ」
 またここでこの言葉が出る。
「天下無敵の大不便者じゃ」
「そうやも知れぬ。しかし」
「しかし。何だ?」
「それならそれでいいであろう」
 慶次のそうした資質を認めた言葉だった。
「それが今の御主になっているのならな」
「そう言うか」
「実際にそう思うからな」
 だからだというのだ。
「御主はそれでよい」
「童心のままでか」
「純粋に傾くとな。そしてその御主と友になった」
 兼続は言いながら幸村と阿国も見て述べた。
「それは誇りになる」
「誇りか」
「そうだ」
 確かな笑みでの断言だった。
「まさにな」
「わしが誇りか。それはどうもな」
「わしがそう思っているだけだ」
 少し苦笑いになった慶次に今度はこう言う。
「だから気にすることはない」
「そう言ってくれるか」
「うむ、それではな」
 兼続はさらに話す。
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