第百二十一話 四人の想いその十
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「なろうね」
「うむ、それではな」
「武田と上杉は仇敵同士」
「それであっても」
幸村と兼続は互いに見やる、そのうえでの言葉だった。
「それでもか」
「友になれるのか」
「戦の場で会えば戦うまでじゃ」
慶次は戦についてはあっこけらかんとしている、敵として会えば思う存分刃を交える、それだけのことだった。
それで仇敵同士の二人にも言うのだ。
「それだけではないか」
「では戦以外の時は」
「友としてか」
「楽しめばいいとわしは思う」
慶次は笑ってここまで言った。
「それでどうじゃ」
「ふむ。そうだな」
「戦の場ならいざ知らず」
二人も言い合う。
「敵、心が通えばそれでも友となる」
「それならばか」
「ではよいか」
また言う慶次だった。
「再び茶を煎れるが一つの碗に入れる」
「そしてその茶を飲むのか」
「四人で回して」
「そうしようぞ」
こう幸村と兼続にも話す。
「これでどうじゃ」
「うむ、わかった」
「それならな」
二人は考えた、そのうえでの返答だった。
「戦の時はともかくとしてじゃ」
「今はそれでよい」
「ならば共に飲もうぞ」
「一つの碗でな」
「あたしもそれでいいよ」
阿国も笑顔で乗ってきた。
「何か面白いね。一つの碗で茶を飲むね」
「そうじゃ。そうして友になった証にしようぞ」
「おなごでもいいんだね」
「構わぬ。友は男だけでならんという決まりもない」
だからだというのだ。
「ではよいではないか」
「そうだね。じゃあね」
「今から煎れるぞ」
「楽しみに待ってるよ」
こう話してそのうえでだった。
四人は共に慶次が煎れた茶を回して飲んだ、それが終わってからまずは幸村がこう他の三人に言った。
「さて、これでだな」
「うむ、我等は互いに友となった」
兼続がその言葉に応える。
「今よりな」
「そうなったか。上杉と武田にいながら」
「火と水がな」
武田の赤は五行では火、上杉の黒は水になる。尚織田家の青は木になる。方角ではそれぞれ南、北、東になる。
「相反する者同士がか」
「共になるのか」
「面白いではないか」
慶次は笑ってこうも言う。
「それもまたな」
「面白いか」
「こうしたことも」
「信玄殿も検診殿もこれでとやかく言われる方々か」
「いや、違う」
「それは断じてない」
二人共慶次の今の問いにはすぐに返した。
「御館様はそれがしの二心なきことはわかっておられる」
「殿には常に全てを見せている」
宿敵同士で友になったとしてもだというのだ。
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