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ドン=カルロ
第四幕その六
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まさか!?」
 カルロはその言葉にハッとした。
「そうです、おわかりになられましたね」
「そんな馬鹿なことがある筈がない!」
 彼は叫んだ。
「いえ、本当です」
 ロドリーゴは静かな声でそう言った。
「私はもう陛下に仇なす反逆の徒、フランドルを煽動した謀反人なのです」
「父上も君のことはよく知っている、それは嘘だ」
「陛下だけがこのスペインを統べられているわけではありません」
「そんな筈が・・・・・・」
 カルロはそういったところで気付いた。
「そうか・・・・・・」 
 そして鉄格子を掴んだまま項垂れた。
「殿下もまた彼等に命を狙われておりました」
「私の命なぞどうでもいい」
 彼は首を横に振ってそう言った。
「そういうわけにはいきません。殿下はこれからのスペイン、そしてフランドルにとって欠かせぬお方なのですから」
「ロドリーゴ」
 カルロは顔を上げた。
「もし彼等が君の命を狙っていても誰がそんなことを信じるのだ!?」
「彼等にとっては神だけが全てです」
「証拠は!?何もないじゃないか」
「あの者達にとって証拠は必要なものでしょうか!?」
「いや・・・・・・」
 それは彼もよくわかっていた。異端審問に際して最も重要なことは疑われないことである。証拠は不要なのだ。何故なら神が全ての証拠なのだから。そして多くの罪無き者達が惨たらしい拷問と燃え盛る炎の前に消えていった。このスペインはまだましであった。彼等の同胞である神聖ローマ帝国はその叫び声で満ち燃え盛る炎の煙で天は暗黒に覆われていたのだから。

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