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ドン=カルロ
第四幕その四
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第四幕その四

「申してみよ、許してつかわす故」
 言葉を続けた。
「そなたの不義を」
 これが決め手であった。王妃はその場に崩れ落ちた。
「耐えられなかったか」
 王はそれを一瞥した。
「所詮己の心を保てなかったということか」
 言葉と口調こそ冷徹なものであったがその顔には哀しみが宿っていた。
「誰かいるか」
 彼は再び呼び鈴を鳴らした。やがて小姓が入って来た。
「二人程呼んで参れ」
「わかりました」
 やがてロドリーゴが入って来た。
「そなたか・・・・・・」
 王は彼の顔を見て顔を暗くさせた。
「はい」
 ロドリーゴは大審問官の心を知らない。そして王と彼の会話も知らなかった。だから王が何故顔を暗くさせたのか知らなかった。
「もう一人呼んだ筈だが」
「陛下、如何致しました?」
 そこにエボリ公女が現われた。彼女とロドリーゴは一瞬視線を交えたがすぐにそれを逸らせた。王の前だという意識がそうさせたのである。
「これを見よ」
 王は倒れている王妃を指差して言った。
「な・・・・・・!」
 それを見てロドリーゴも公女も言葉を失った。
「公女よ」
 王は公女に顔を向けて言った。
「そなたの申した通りであったな」
「それは・・・・・・」
 彼女は顔を白くさせた。まさか自身の一時の憤りがこういった事態を招くとは。
 彼女はカルロに対し怒り王妃に嫉妬しただけであった。それが王妃をここまで追い詰めるとは。
 王妃は憎くはなかった。だが怒りが彼女を狂わせてしまったのだ。
(大変なことをしてしまった・・・・・・)
 顔には出さまいとする。だがどうしても出てしまう。王はそれに気付いた。
「どうした、何かあるのか?」
「いえ・・・・・・」
「そうか。なら王妃を助けてやるがよい」
 顔が青くなったのは倒れたところを見たからだと思った。そして彼女に対し命令した。
「わかりました」
 彼女は王妃の側へ寄った。ロドリーゴもそれに続く。介抱は公女がしている。ロドリーゴはそれを助けている。
「陛下」
 彼はそれを続けながら王に対して言った。
「何だ」
 王はそれに対して煩わしそうに顔を向けた。
「一体何があったのかはわかりませんが」
 彼はある程度は察していたがあえてそう言った。
「慈悲の心は常に心に留めて下さい」
「わかった。しかし・・・・・・」
 王は苦しい表情で彼を見て言った。
「時にはそれをもってしてもどうにもならぬことがある」
 それは他ならぬロドリーゴ自身にかけた言葉である。
「しかし・・・・・・」
 ロドリーゴはその言葉の真意がわからない。
「言うな」
 王はそれ以上の言葉を拒絶した。
「わかりました」
 彼はそう答えるしかなかった。
「王妃様、お気を確かに」

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