第四幕その三
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「王子の肖像か」
「はい」
観念したエリザベッタは顔を俯けて答えた。
「これはどういうことだ?」
王はそれを彼女に見せながら問うた。静かだが反論や言い逃れを許さぬ厳しい声である。
「彼は私の婚約者でした」
「だから持っていたというのか?」
「はい」
「今でも愛しいと思って」
「それは・・・・・・」
「違うというのか?」
王の言葉は彼女を捉え離さなかった。鉄の鎖の様にきつい束縛であった。
「陛下」
彼女はそれにあがらおうと決心した。そして顔を上げた。
「私をお疑いになられるのですか?」
「・・・・・・・・・」
王はあえてそれに対して答えなかった。
「百合を司る家に生まれた私を」
ヴァロア家の紋章を出してきた。純潔の証でもあるそれを。
「百合か」
王はそれを聞き静かに言った。
「百合でも穢れることはあろうな」
その声は地獄の奥底から聞こえてくるようであった。
「そんな・・・・・・」
エリザベッタはその言葉と冷酷な口調に絶望した。
「清らかな百合にも虫はつく。否定出来るか?」
「はい・・・・・・」
彼女は死にそうな顔で答えた。
「私の操は神が証明して下さりますから」
「神か」
彼にそれを否定することは出来なかった。エリザベッタはそこまで考えてはいなかったが口に出した。
「ではそなたは地獄の門へ向かうのだな。フランチェスカ=ダ=リミニにように」
王はその冷酷な声を崩さずに言った。フランチェスカとか義弟との不義の恋の末に死した女性である。
「陛下・・・・・・」
彼女はもう完全に血の色を失っていた。
「答えてみよ」
「・・・・・・・・・」
エリザベッタは答えようとしない。
「答えぬのか!?」
王は問い詰めた。
「お答えします・・・・・・」
彼女は顔を上げた。王はその顔に対して言葉を浴びせるように言った。
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