発作的ショートストーリー デビ☆サバ外伝
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すぐに純吾が我に帰って後を追った。
これが、今までの経緯である。
「……べっつに、何でもないわよ」
自分の行為を悪いとは思ってはいるのだろう。亜衣梨は、まっすぐな純吾の視線から目を逸らし、ぶっきらぼうに答える。
ここで普通なら「本当に?」とか、更に追及でもするのだろうが、純吾はそう、と短く首肯するだけだった。それから、亜衣梨と一緒になって壁に背を預ける。
「ねぇ」
「何よ」
「アイリ、ここの人嫌い?」
その問いかけに思わずキッと純吾を睨む亜衣梨。けれども、視線の先にあった心配そうな純吾の目を見て言葉に詰まってしまう。
諦めたように視線を床に向け、長くて紅い前髪をいじりながら答えた。
「…別に、そんな事ないわよ。ただ、ジュンゴ以外の人と最近話さなかったから、何話していいか分からなくなっただけよ」
その亜衣梨の答えに、純吾はもう一度そう、と答え
「ん…。実は、ジュンゴも。ずっと緊張してた」
それから、少しだけ口の端を持ち上げてそう言うのだった。
「…ばーか」
貴重な純吾の微笑みを見て、亜衣梨は聞えないように罵倒の言葉を口の中で転がす。
今の純吾の言葉は嘘だと、たった3日の短い付き合いながらも亜衣梨は知っていたからだ。
実はこの青年、野暮ったい話し方しかできない癖に、意外なほど社交的なのだ。児童福祉施設の(孤児院では? と言うと、「みんな、独りじゃない」と珍しく口をすっぱくして訂正された)出身で他人との接触にも抵抗が少なく、かつ、これまで居酒屋で働いていたという事で、この雰囲気にも大いに慣れているからだ。
実際さっきも、その朴訥な話し方と雰囲気を活かして他の人に話しかけ、料理や猫など、今では憧憬すら覚えさせる“日常”についての豊富な話題を駆使して、大いに場を盛り上げていた。
……そのお陰か、余り喋っていない自分も、他のサマナーに良い印象を持ってもらう事ができた。
そんな純吾が、この程度で緊張するはずがないのだ。けれども、こうして自分を心配してくれて、合わせてくれる。
これまでも自分が短気で、我がままに振る舞っているという自覚はある。けれども、それは自分ではどうしても止められなくなっていたのだ。
以前から感じていた、けれども、決して表に出る事はなかったそれを押しとどめていたものは、世界の崩壊と共に無くなってしまっていたのだから。
でも、純吾と一緒ならそこまで自覚しなくてもいい。何を考えているのか知らないが、純吾はこんな自分を受け止め、支えてくれるのだ。
自分でも止められない自分を、彼なら止めてくれる。自分の醜い所は、彼にぶつけてしまえばそれで治まるのだ。彼と一緒にいる限り、自分は前の自分でいられる。
だから亜衣梨は、彼には伝わら
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