第八章 望郷の小夜曲
プロローグ 新たな夢
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――――――消えていたことに………………………。
―――神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる―――
声が聞こえる。
―――神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空―――
いや……これは歌だ……。
ハープの美しい旋律と…………。
―――神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す―――
穏やかで……優しい……歌声。
タリエシン……か……?
いや……違う…………。
……透き通るような……この声は……
―――そして最後にもう一人……。記することさえはばかれる……。
……まるで……妖精の声だ…………。
―――四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた―――
歌声に導かれるように目を覚ました少女の視線の先に、窓から差し込む月光に照らされた妖精がいた。
木製の椅子に座り、妖精は眠る自分に背を向け歌を歌っている。
月光に照らされた妖精の髪は、月の輝きを受け、自ら輝いているかのような煌きを魅せ。髪から覗く尖った耳が、ヴァイオリンの弓のように、金の髪を微かに揺らし、シャラシャラと涼やかな音色を響かせている。白い陶器のような指が鳴らすハーブの響きと、金の髪が揺れる音を伴奏に、妖精は歌を奏でる。
聞き惚れるように瞼を閉じると、頬を伝う濡れた感触に気付く。
無意識に頬に手を伸ばすと、身体に掛けられたシーツが音を立てた。
「―――えっ?」
「ぁ……っ」
歌声が止み、妖精が振り返る。
歌が止まったことに、名残り惜しげな声を漏らす少女だったが、振り返った妖精の美貌に気付き、息を飲んだ。
物音一つ立たない空間の中、少女と妖精が見つめ合う。
月の光りで形作られたかのような、柔らかな美貌を魅せる妖精は、自分を見て何やら驚いたように目を見開いている。そんな非現実的なほど美しい顔に浮かぶ、人間味が感じられる表情に、少女は驚きに固まる顔を僅かに綻ばせた。
「……ぇ……?」
しかしそれは、周囲に満ちる魔力の強さに気付いたことに、再度強く引き締められた。少女が確かめるように視線を動かすと、こちらを見つめる妖精の背にある小窓から、二つの月が浮かぶ満天の夜空に気付く。
「これ……は……?」
今度は少女の顔が、驚きに目を見開かれた形で固まった。
呆然とした声を漏らしながら少女が身体を起こすと、自身の金の髪が顔に僅かにかかる。
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