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剣の丘に花は咲く 
第八章 望郷の小夜曲
プロローグ 新たな夢
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 朝と夜の境。

 空に瞬く星の光りの下。

 未だ明けぬ夜を振り払うように、馬を駆る騎士の姿があった。





「アーサー王っ! 気をしっかりお持ちくださいッ!」

 馬を駆る長身の騎士の後ろには、もう一人小さな騎士の姿があった。馬を操る長身の騎士の背にいる小さな騎士―――アーサー王と呼ばれた者は、力なく馬の上に荷物のように乗っている。夜霧に濡れる草原を駆け抜ける馬影が向かう先には、暗く沈む森の姿があった。
 手綱を握る騎士は、後ろにいるアーサー王に対し必死に呼びかける。しかし、騎士の呼びかけに、アーサー王は声を返すどころかピクリとも動かない。

「―――っ、王よ……まだ、まだ逝かないでください……っ」

 湧き上がる不安を振り払うように、騎士は更に馬を駆る速度を上げた。















 夜の星が消え。

 空に日が昇り始める頃。

 森の奥深く。

 木々の枝葉の隙間から溢れる。微かな木漏れ日の先に、二人の騎士の姿があった。

 先程馬を操っていた長身の騎士は馬の横に立ち、大樹の根元にもたれかかる小さな影を見下ろしている。目を瞑り、大樹の根元に寄りかかる小さな影―――アーサー王は、騎士が馬の上から下ろした時からピクリとも動かない。
 馬から下ろす際、身体から鼓動と温かみを感じたため、まだ大丈夫だとは思うが、出血は止まらず、意識も未だ戻らない。湧き上がる焦燥感を歯を食いしばり押し殺すと、騎士はアーサー王に頭を下げた。

「―――っ……アーサー王。すぐに兵を呼んでまいりますので。それまでこちらに―――」
「……ベディヴィエール」
「―――ッ!! い、意識が戻られましたかっ!!」

 顔を下げ意識がない王に話し掛けていた騎士の言葉を止めたのは、意識がないはずの王の声だった。
 アーサー王からベディヴィエールと呼ばれた騎士は、王の声に勢い良く顔を上げる。喜色が浮かぶ顔を、弱々しく顔を上げるアーサー王に向けるベディヴィエール。
 アーサー王は、霞掛かった目でベディヴィエールを見上げながら、ゆるゆると声を呟く。

「……少し……夢を見ていた…………」
「夢―――ですか……?」

 嬉しそうであり……しかし、どこか寂し気に微笑みながら、アーサー王は囁くように言葉を紡ぐ。
 何時にない王の姿に、ベディヴィエールは頭を上げる事も忘れ、そんな王の姿に見入っていた。
 アーサー王は、目の前のベディヴィエールの様子に気付いているのかいないのか、小さく顎を引き頷いて見せる。

「ああ……夢は……あまり見たことがないのでな。貴重な体験をした」
「では、お気遣い無くお休みください。兵が来るまでの短い時間ですが、また目をつぶれば、きっと夢の続きが見ら
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