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ドン=カルロ
第四幕その二
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ドルの為に申し上げましょう。ポーザ公爵を除きなされ」
「それは・・・・・・」
 王はそれを拒もうとした。しかし。
「神の為です」
「・・・・・・・・・」
 それを否定出来なかった。スペインの王として、ハプスブルグ家の者として。
「このスペインは神の守られた国です。それを治める陛下にもそのご加護なくしては治められぬのはおわかりでしょう」
「そのご加護とは・・・・・・」
 異端審問、そして僧侶達の横暴のことだ、と言おうとしたが言う事は出来なかった。スペインの僧侶達はドイツやフランスのそれと比べると腐敗は酷くはない。厳格なイエズス会の影響だがそれはそれで王にとっては厄介であった。今目の前にいるこの審問官の様に頑迷な人物を輩出してしまっているからだ。
「わしは先王にもお仕えしました」
「父上か」
 壁にかけてある肖像画を見る。彼と殆ど同じ顔のその肖像画の人物こそ父カール五世であった。神聖ローマ帝国を、そしてこのスペインを支えた偉大な父だ。
 彼は常に思っていた。自分はこの父より劣っていると。だがそれを拭い去る為に彼は今まで身を粉にしてスペインの為に働いてきたのだ。
「陛下は今先王に肩を並べられようとしております。今この国は世界の頂点にあります」
「父上に」
 彼はその言葉に甘い囁きを感じた。
「だが私には彼の力が」
「必要ありませんな」
 それに対して審問官は言い切った。
「先王も一人でこのスペインを支えられました。陛下にそれが為せぬ筈がありませぬ」
「そうは言うがな」
 父カール五世も最後には力尽き全てを彼と自身の弟フェルディナント一世に譲り歴史の表舞台から退いた。その時の姿はそれまでの偉大な君主ではなく疲れきった一人の老人であった。

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