霧の森
夢想
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向こうのテーブルで楽しそうにしている男、それは彼女の「相棒」、
「カズヤ……。」
私は柱からそっと離れ彼を見る。幸いまだ彼は気づいてない。
見つからないようにしているわけではないが、そっと歩き彼の背中に近づき。声をかける。
「カズヤ……。」
「セリナ……。」
カズヤは私を見ると手を止めて立ち上がり私の前にくる。
「うぅ……!」
「グフッ!?」
私はタックルの要領で彼の胸に飛び込みそのままの勢いで押し倒した。
「セリナ?」
「寂しかった。ねえ、どこ行ってたの?」
「……ごめん。」
彼の肩に手をつき顔を見ると、彼は顔を背けた。
「ごめんって私がどれだけ不安に思ったか分かっているの?」
「ごめん。」
「ごめん以外に何か言うことないの?」
「そう、だな……。」
背けていた顔を戻したカズヤは私をまっすぐ見た。
「ただいま、セリナ。」
「うん、お帰りなさい。カズヤ。カズヤ!」
自分の腕をカズヤの首に回し、頬ずりする。
仲間の匂いをかみしめ、どこへも行かないようにしっかりホールド。
「セリナ。」
「なあに?」
一度頬を離し彼の話に耳を傾ける。カズヤはどことなく緊張しているようにも見える。
「セリナ、オレと結婚してくれ。」
「え……?」
一瞬私はカズヤが何を言ったのかわからなかった。けど、その意味を理解するとうれしくなった。
「はい!」
カズヤは私の肩を掴み引き寄せる。すなわち私の顔とカズヤの顔が近づく。
目を閉じその時を待つ。
「好きだよ、セリナ。」
「私も、好き。」
鼻先に彼の息がかかりいよいよその時が来る。
「……っは!」
唇に触れられた感触はなく代わりに頬が何か固くザラザラしたものに押し当てられていた。
よく見るとこれはテーブルだ。しかも妙にてかてかしている。匂いもあまり良いものではない。
「…よだれ?」
粘着質でこのにおい、どう考えてもよだれのほかなかった。
「夢?はぁぁ……。」
あれが夢だったなんて、かなり残念。そしていつの間に寝てしまったのだろうか。
ついでに頭を上げると向かいの席にニコニコした男が座っていた。はっきり言って気持ち悪い。寝起きにこんなものに遭うとは、今日はよっぽどツキがないらしい。
「おはよう、よく眠れた?」
「ええ、よくねむれまし…た、よ?」
ぼさぼさの黒い髪、ヨレヨレのシャツ、どこかで見たような顔。…あれ?
「カズ、ヤ?」
「おう。」
「いつ帰ってきたの?」
「ん〜、ついさっき?」
「なぜ疑問形だし。」
「だってもう2時間ほど前
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