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東方守勢録
第六話
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、爆発のひとつもおこっていなかった。


「……なにも……起きてないわよ?」

「はい。まだ何もしてないんで」

「?」


俊司はそれだけ言うと、大きく深呼吸してハンドガンを構えた。


(弾丸に爆発のイメージをのせて……威力は最初は少なめ。爆風も最小限に抑えて、周りに被害をださないようにする……想像を……弾丸に……)


俊司は頭の中でイメージを膨らませていく。周囲のことも考えながら、出来あがった想像を体を通してハンドガンに伝えていく。

そしてすべて想像し終えた瞬間、俊司はなにも迷うことなく引き金をひいた。

ここまでの流れは、いつも俊司が戦う時とほとんど同じ。だが、由莉香達に聞こえてきたのはいつもの発砲音ではなく、何かを放出したかのような大きな発砲音と、襲撃をだしながら鳴り響く爆発音だった。

ハンドガンから発射されたのは、弾丸ではなくグレネード弾だったのだ。


「……よし!」

「えっ……今の……」

「な? 言ったろ?」


俊司はそう言って軽い笑みを浮かべていた。


「しっかし……こいつだいぶ強度があるな」


爆発によって防御壁はダメージをうけていたが、破壊するとまではいかなかった。だが、表面にはかるい亀裂が入っており、爆発に弱いのはまだ改善されていないようだった。

俊司達に希望の兆しが見え始めていた。


(次はもっと強くして……)


俊司は再びイメージを膨らませていく。さっきより大きな爆発・威力を想像し、再びハンドガンへと伝えていく。そして、すぐさま引き金をひいた。


「うわっ!?」


イメージが強すぎたのか、爆風によってよろける俊司。だが、それだけ威力が上がっているということ。

爆風がやみ煙が去った後、一同の目の前には希望が広がっていた。


「開いた!」


俊司は喜びのあまりそう叫んだ。


「すごいよ俊司君!」

「はあ……よかった」

「これで外に出られるわね!」

「さすがだな。俊司君」

「そんなことないですよ。さ、急ぎましょう!」


防御壁が壊れてしまった今、俊司達を止める物などなにもない。一同はすぐさま基地から脱出するのであった。









数分後


「はあ……はあ…ここまでくれば……」

「追ってもこないわ」

「……成功ですね!」


基地からかなり離れた森の中で、一同の歓喜の声が上がった。
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