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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十八話 思想と目的
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クリウスに向かって放たれたその一撃は明らかに殺す意図をもって放たれたものだと理解できる。その不意打ちにも近い攻撃を前に些かばかり、メルクリウスも疑問を持つ。対して、彼は率直だった。

「悪魔とは最後には意思に背く存在となる。そう、だからこそ、これはある意味当然のことなんだよ」

頭を下げるのも、従順に従うのも総ては座に構える者のみに対して。だが今この場においてはそれはここにいる誰もが資格を持ち、そしてだからこそ、それに値するのかを試す。

「あなたが譲るにしろ、維持するにしろ、それは詮無きことだ。俺にとっては誰が引き継ぐかなど本来どうでもいい。誰が成そうとも彼らなら何も変わらん。
しかしだ、一方で確かめておきたい。そう思う意志も存在する。あなたの引き継ぐ、その先が俺にとって認めれる存在であるか否かを。故にあなたを使って測りに掛けよう。継がせたいのならば認めさせるがいい」

でなければ、君の信仰する女神にすら牙を剥くぞと。そう目が語っている。そして、

「己の身の程を知れよ、アグレド。君が友であることは変わりないが、女神か君かと問われれば私は迷いなく女神を選ぶ。故に散れ。私の邪魔をするというのならば女神の地平を生む礎となるがいい」

メルクリウスもまたそれを許しはしない。女神を殺そうとする存在(なまじ殺すことが可能な存在であるが故に)を許しておくわけにはいかない。
そして放たれる流星。しかしアグレドは焦るでもなくそれらを前にして嗤いすらした。



******



さて、突然だが己の起源というものに疑問を抱いたことはないだろうか?ん、お前自身はどうなのだと?ああ、当然俺にもある。俺という存在はいつからだったかここにいた。千年などと言う儚い縛鎖などではない。永劫の時すら超え、まさに永遠(とわ)に等しい時をこの地獄で虜囚のように捕らえられていた。

「然り、故にアグレドよ。永劫にも等しき時を過ごし、それを享受しながら今更何を望む」

無論、望む物などない。だが、言うだろう。大欲は無欲に似たりと。永遠の世界平和を望む者は結局、何もしはしまい。同様に何も求めない者は求めないが故に何に頓着することもあるまい。要はそれだけの話だ。

「だからまあ、折角機会があるのなら君に挑もうと、そう思っただけだ」

既知の世界から離れた最奥を特異点というのなら、ここはさながら世界の果てすら超えた氷の牢獄(コキュートス)だ。既知の世界でもなければ、未知があるわけでもない。ここにおいて、そうここであれば彼は、否、誰であろうとも全身全霊を尽くすことが出来る。
現人神であるが故に既知の世界では身動きが取れず、座の意志を持つ存在であるが故に特異点を穢す事もまた出来ない。即ち、彼は世界の終わりでしか全力を出せない。
だが、ここ
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