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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第三十七話 悪魔の正体
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「む……」

「何が……?」

突如、シャンバラの方陣が形を歪め、そして世界を歪ませた。それに驚愕する二人。いや、二人というのには語弊はあるかもしれない。何故なら少なくともラインハルトにとってはシャンバラの方陣を邪魔だと言わんばかりに力を全力で振り払っていたのだから。
だが予想に反して陣は壊れるのではなく、形を歪ませだしたのだ。故に両者は共に疑問を抱く。これは一体何なのだ、と。蓮とラインハルトが今この中心であった以上、他者の介入など今更許すはずもないのだ。にも拘らず、何か自分たちの予期せぬところで何かが起きている。
蓮にとっては方陣に取り込まれている玲愛が気になるであろうし、ラインハルトにとってはこの戦場を濁されたことに苛立ちが募る。そして、果たして方陣は世界すらも歪ませた。

「これは……!?」

例えば、この世界が一枚の紙だとする。その紙に書かれた絵がこの世界の既知だ。そして、蓮やラインハルトはこの世界を塗りつぶす存在だ。方や色鉛筆のように書き記すような存在が蓮であり、絵の具のように塗りつぶす存在がラインハルトだ。そして互いが一枚の紙の上を自分の色に染め上げ、勢力図のように書き換えていく。これまでの戦いはまさにそんな戦いであった。
では、その一枚の紙が変化すればどうなるのか?それはまさに世界そのものへの干渉となる。チェスの盤面の形を将棋の盤面に変えるかのごとく、世界の形を彼は覆した。

その情景はまるで箱庭(エデン)。花が舞い散る庭園と、その一歩外に見える無の世界。造られた世界であり、ある種完成された世界と言えるかもしれない。だが、少なくとも蓮が思うにこの世界は良しとしていいものではなかった。ここにあるのは全てまやかし。誰もおらず、何もなく、ここには既知も未知も関係ない。まさしくここは無そのもの。座からの干渉を覇道を流すことで無理矢理掻き消しているのだ。そういった意味でもここは出鱈目だ。

「ようこそ。この美しくも狂おしい箱庭(じごく)へ」

声が聞こえる。その声には聞き覚えがある。既に総軍に呑み込まれたアルフレートの声だ。だが、その声は違う。何かが確実に違うのだ。発音?空気?口調か?そのどれでもあり、またそのどれも明確にあてはならない。

「いや、こうして他者と話をするなど水銀以来だ。まあ引き合わせたのは俺自身だが、どうした席に掛けてもらって構わんぞ」

振り返ると、そう言って和やかに西洋式の椅子に着きながら声をかけている相手がいた。その姿に見覚えはない。だが、その気配は何故かアルフレートを彷彿させる。理解が追い付かない。今、目の前にいるのは確実に別人だ。そのはずなのだ。だからこそ、それに最も疑問に思うであろう人物が問いを投げる。

「卿は何者かね?」


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