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ドン=カルロ
第一幕その二
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第一幕その二

 彼のそうした性質は父カール五世から受け継いだと言われている。彼は一身に神聖ローマ帝国という国を背負い常に動いていた人物なのである。
 ここにいる彼は父のそうした性質をい受け継いでいるであろうか。少なくとも外見からはそうは思えない。やはり虚弱な感が否めない。
 彼の名はカルロという。ドン=カルロ。それが彼の名であった。その繊細な性質と頼りなげな外見から宮廷の女性からは人気があるが謹厳な国王からは今一つ快く思われてはいなかった。
「この広い森でこんなに早く彼女に出会えるとは」
 彼は木の陰から姿を現わして言った。86
「それに素晴らしい景色だ。このように凍てついた森は今まで見たことがない」
 彼は長い間マドリッドの宮殿の中にいた。その地は暑く雪はあまりない。そしてこのような森なぞ見たこともなかったのである。
「父上に逆らってまで大使の随員に身をやつし見ることができた我が妻となるべき方。今まで思い焦がれ、そしてこれからも恋の炎のこの身を燃やすことのできる方だ。私はあの方のお姿を見ることでそれを確信することができた」
 彼は喜びをその全身に露わにして言った。
「これから私は愛に生きるのだ、今まで空虚だった世界がまるで春の美しい空に包まれたようだ」
 彼はエリザベッタの去っていった方に向かおうとする。だが足を止めた。
「いや、待て」
 彼は自分に言い聞かせた。
「もう夜になっている」
 見れば森の木々から見える空は夜の帳に覆われている。星が空に輝いていた。そこで森の中から声が聞こえてきた。
「魔物か!?」
 違った。それは人の声であった。
「人か」
 だがカルロは身を隠した。そして声の主達がこちらにやって来るのを感じた。
「皆来てくれないか!?」
 見れば先程の王女の一行である。その中の一人が王女をその腕で支えている。
「一体どうしたというのだ!?」
 カルロはそれを見て首を傾げた。
「まずいですわ、もう夜になりましたわ。これでは道がわかりませんわ」
 王女を支える侍女が困った顔をしていた。
「王女様、私共が何とか致しますから」
 彼等は王女を切り株に座らせて王女に対し畏まって言った。
「気を落ち着け下さい」
 やがて先程の樵達も戻ってきた。
「はい」
 王女はその言葉に答えた。無論彼女とて不安に苛まれている。夜の森の中程危険なものはない。熊や狼、そして妖精や魔物達が蠢いているのだから。
「もし」
 カルロはそんな一行の前に姿を現わした。
「誰です!?」
 一行は彼の姿を見て身構えた。
「御心配なく」
 彼は彼女達に対して優しい声で語りかけた。
「私はスペインから来た者です」
「スペイン!?」
 一行はその言葉に目を皿のようにした。
「はい、今回の大使の随員として
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