Episode 3 デリバリー始めました
ロングディスタンスコール
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春の終わり、そして夏の初めという時期は、一年のうちでもっとも美しい季節である。
赤、白、黄色、橙、紫……暖色を中心とした花々がその美しさを競い合い、その花々に触発されたかのように緑為す枝葉も鮮やかで明るい緑を身にまとう。
遠くから見れば、まるで巨大な大地をキャンバスに春の神々が絵筆を握ったかのような、そんな美しい地上絵が地平の彼方まで続く草原を、一本の道が貫いていた。
石畳の舗装もされていないこの道は、都市国家ビェンスノゥへと届く商業通路。
今日も都市の間を渡り歩く商人と、彼等の荷物を牽くロバの足音が雲雀の声を伴奏に単調なリズムを繰り返す。
それなりに人通りがあるのか、むき出しになった路面にはほとんど雑草が生えていない。
ただ、空気が乾燥しているせいか、歩くたびにひどく土煙が舞い上がるの唯一の悩みだろうか。
そんなのどかな風景に異変が合ったのは、およそ太陽が中天をやや過ぎた頃。
「なんだありゃ?」
背後から聞こえてきた不穏な音に商人が振り向くと、はるか彼方から盛大に土埃を巻き上げて何かがものすごいスピードで迫ってくるのが見えた。
「こりゃいかん!」
商人は慌ててロバを脇に避けると、この景色に似合わない慌しい珍客をやり過ごす。
やがて――やってきたのは、この国の西にある領地を守る守備隊の紋章を纏った騎兵だった。
悲壮感すら漂う顔をして駆けて行くその姿は、よほどの重大事件が発生したとしか思えないのだが……いったい何事だ?
西の砦が勇者に襲われたという事は聞いているが、同時にすでに勇者が撤退したという情報も確かな筋から入手している。
彼等がそんなに慌てなければならない理由が頭に浮かばず、商人は首をかしげながらその背中を見送るのだった。
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「お弁当の配達ですか?」
息を切らせた騎兵を前に、キシリアは困惑しながら首をかしげた。
「はい、あなたの"弁当"が必要なのです! しかも早急に!!」
いますぐやれといわんばかりの剣幕に、キシリアが困った顔をする。
のどかな街道を爆走した騎兵が駆け込んだのは、辺境の街道沿いに位置するキシリアの店――アトリエ・ガストロノミーだった。
しかも、開口一番に告げられたのが、ここから馬で半日はかかる遠方の砦。
しかも量がかなり多い。
「無理です。 いくらお弁当でも、この気温の中を西の砦まで配達すれば、到着するまでに傷んでしまいます。 ごめんなさい」
そもそも材料をそろえて調理するだけで一日仕事だ。
そんな事に関わったら、明日の仕込が出来なくなってしまう。
こんな依頼は受けられない。
判断を下すのに2秒とか
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