Episode 3 デリバリー始めました
ロングディスタンスコール
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からなかった。
「なら、現地で作ればいいでしょう。 いますぐ一緒に来てください! あなたの料理のファンが弁当の禁断症状を起こした上にトチ狂って暴動を起こしているんです!」
「な……なんですってぇ!」
騎士の口から告げられた台詞に、キシリアは思わず頭を抱えた。
キシリアの弁当のファンには兵士も多いのだが、そんな彼等の一部が西の砦の交代要員として旅立ったのはおよそ2週間前。
キシリアの店の常連が『そろそろ禁断症状が出る頃だな』と呟いていたのはつい昨日のことである。
――俺の作った料理は麻薬か何かの一種かよ!
そう心の中で不満げなツッコミをいれたのも記憶に新しい。
それがまさかこんな形で実証されるとは、心外もいいところである。
まぁ、問題の兵士をこの街に返せばよいという話もあるが、いくらなんでも『ご飯を恋しがっているから兵士を待ちに返します』では、他の兵士に示しがつくまい。
それゆえにおきた暴動だとは思うが、いくらなんでもやりすぎた。
そのぐらいなら、普通に休暇をとって帰って来いと言いたいが、おそらくそれも出来ない事情が何かあるのだろう。
「あのですねぇ……私がここを離れたら暴動が起きるんですよ? しかも、兵士どころか民間人まで!! 聞いてないのですか?」
かつてキシリアが店を休んだ際の暴動騒ぎは、今でも街の語り草である。
同時に、二度と起こしてはならないというのが街の人間の共通認識だった。
「だが……このままでは暴動に加担したゴブリンたちを全て討伐しなければならなくなるんですよ!? あなたの店の常連客でしょう!?」
たしかにこのまま見捨てるというのは寝覚めが悪い。
ついでに、キシリアの店でメシを食った兵士は他所に連れて行くと暴動を起こすなんていう不穏な噂は御免被りたい。
国家にとって有害な要素として殺処分なんてまっぴらだ。
大して有能でもないくせに、判断だけは早いあの魔王のことである。
ほっといたらいつ軍勢を差し向けられるか判ったものではない。
いっそ逃げ出して他所の国に行くか?
いや、そんな事をしてもウチ店の常連ならば次元の向こうに逃げたとしても追ってきかねない。
結局は無駄なことだろう。
そもそもだ、こちとら戦闘力を持たぬか弱いシルキーなのだから、国家の敵などと認定されては生きてゆけないのである。
「お困りごとかニャー?」
そこに口を突っ込んできたのは、この店に雇われている奴隷……もとい見習いであるケットシーの一人、マルだった。
「どうせ最初から聞き耳立てていたんでしょ? 何かアイディアがあるなら聞くだけ聞くけど……」
このケットシー、元は怪盗としてこの店に蟹を盗みに来たコソ泥である。
手癖も悪ければ躾も悪い。
人
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