Episode 3 デリバリー始めました
地獄絵図のその後で
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」
「くそっ、死体漁りが!」
ソウテツの口から、反吐にも似た悪態がこぼれる。
死体漁りとは、仲間を殺してその死体を運び去る人間たちにつけられた蔑称だ。
「まったくだ。 二度とこないでほしいものだが……そうはならないだろうな」
彼等はまたやってくる。
生きる為でなく、ただ自分の懐を潤すために。
それは季節ごとにやってくる台風などと同じようなものであり、この魔界が人間界とつながっている以上は避けられない災厄である。
「ドミトリー……実は一つ問題が発生している」
眉間から油でも搾り出そうかとしているかのようにギュッと眉の間に皺を寄せたソウテツが、不意にそんな台詞をもらした。
「なんだ? お前に限って医薬品が足りないなんてことはないだろう?」
「いや、肉体的な問題ではない。 むしろ精神的な問題だ」
「……あぁ、そういう事か」
そういわれて、ボイツェフ中隊長はようやく気づく。
――心的外傷。
勇者の襲撃は、兵士たちの肉体的な傷ばかりではなく、心にも大きな傷を残すのだ。
「重症の患者の中で、手の施しようが無いほど精神的にまいってるのが何人かいるのだが」
「わかった。 本国に交代要員の要請を出しておこう。 無理に引き止めても指揮に関わるだけだ」
無理をして脱走でもされたら規律が乱れるし、そもそもソウテツが手の施しようが無いと判断するような兵士を残したところで使い物になるとも思えない。
だが、そんなドミトリーに対し、ソウテツは沈痛な表情で首を横に振った。
「それが……本国に帰りたがっているヤツがほとんどなのだが、これはまぁ問題ないだろう。 だが、中に妙な要求をするものがおってな。 要望が通らなければ暴動を起こしかねない」
「暴動とは穏やかではないな。 彼等は何を求めているのだ?」
正直、心的外傷を患った兵士が戦場に留まりたがるとは思えない。
いったい、彼等は何を求めるというのか?
いぶかしげな表情を見せるボイツェフ中隊長に、ソウテツは困惑した顔でこう告げた。
「料理だ」
「料理? 人間がするという面倒な食事の作業の事か?」
一度味をしめると離れられなくなると言うが、典型的な魔族の、しかも贅沢の許されない辺境の指揮官であるドミトリーには何がいいのかまったく理解できない。
「あぁ。 その中でも、彼等が求めているのは"アトリエ・ガストロノミー"という辺境の小さな店のモノらしい」
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