第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十二 〜語らい〜
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分に使いこなすだけの自信があるもの」
ふふふ、断言するか。
だが、才能と実力に裏打ちされた自信。
大言壮語、と相手に思わせないだけのものは備えている、それが曹操という人物なのだろう。
「でもね、今はあの子達は勿論だけど。……歳三、貴方が気になるわ」
そして、華琳は真っ直ぐに、私を見据える。
「私に仕えなさい、歳三。貴方は、こんな義勇軍で終わる男じゃないわ」
「…………」
「それとも、董卓の父親ごっこで満足するつもりなのかしら?」
どうやら、月との関係も調べがついているらしい。
隠し立てするだけ、無駄だろう。
「そのようなつもりはない。それに、月はそのような女子ではない」
「でも、彼女は朝廷の高官。無位無冠のままでは、いくら当人がそのつもりでも、朝廷からは決して認められないでしょうね」
「そうかも知れぬ。しかし、それと華琳に仕える事が、どう違うと言うのだ?」
「そうね。私に従うのなら、それに相応しいぐらいの地位は得られるわ。貴方程の将が私の覇業を支えてくれるなら、尚更ね」
悪くない話ではある。
黄巾党の乱が終息すれば、次に待つのは群雄割拠の世。
華琳ならば、間違いなくその中を勝ち抜き、一大勢力を築き上げるだろう。
これは予感ではなく、確信に近い。
無論、相応の働きは求められるだろうが、少なくとも従う事での不利益はない、そう考えて良い筈だ。
……だが、本当にそれで良いのか。
「どうなの? 決断はこの場でなさい。優柔不断な者は、私は必要としていないわよ?」
「ならば、答えよう。……否、だ」
華琳は少しばかり、驚いたようだ。
「理由を聞かせて貰えるかしら。私が至らないから?」
「いや。華琳は主君としては理想だろう。配下を使いこなすという自負も、ただの自信過剰でない事ぐらいはわかる」
「お褒めに預かり光栄ね。なら、他に理由があるのね?」
「ある。一つは、私と華琳は、似通い過ぎている。意気投合はするやも知れぬが……両雄並び立たず、という言葉もある」
「……他には?」
「今、この場で決めよ、という事は、私の一存で皆の運命を決めてしまう事になる。それは、皆に申し訳が立たぬ。だから、否だ」
私の答えに、華琳は小さく溜息を一つ。
「……わかったわ。でもね、歳三」
「何だ?」
「私は望んだものは必ず手に入れる主義なの。どんな事をしてもね」
「……つまり、諦めてはおらぬ。そう言いたいのだな?」
「ええ。それは、覚えておく事ね」
ふっ、まるで宣戦布告だな。
華琳は、席を立ち、天幕を出て行く。
「付き合ってくれてありがとう。それじゃ」
「ああ」
「歳三殿」
一人だけになった天幕に、疾風が入ってきた。
「影ながら警護してくれていたようだな。礼を申す」
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