第三十話 誘引
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二分にある。味方を見殺しにすることぐらい士気を下げる事は無いのだ。
皆が出撃を誘う罠だと口々に言う中、俺はもう一つの可能性について考えていた。ブレーメン型軽巡航艦が実際に現れるかもしれないということだ。その時、司令部は混乱するだろう、自分達は判断を誤ったのではないか、もう少しで味方を見殺しにするところだったのではないか……。
司令部は逃げてきた軽巡航艦を迎え入れろと言う人間と罠だと言う人間で別れるだろうな。だが助けを求めてくれば迎え入れないわけにもいくまい。そしてブラウンシュバイク公の懸念が当たっているとすれば軽巡航艦の中に居るのはローゼンリッターのはずだ……。
当然だが連中の人数は少ない、という事は彼らの狙いは司令部中枢を押さえて帝国軍を麻痺させる事、その隙を突いて要塞を攻略する、そんなところだろう。おそらく小道具も用意しているだろうな。そろそろ俺も連中のもてなしの準備をしておくか。一度は肩を並べて戦った奴らだ、それなりに敬意を示してやろう……。
宇宙暦796年 7月 14日 イゼルローン要塞 ワルター・フォン・シェーンコップ
「艦長のフォン・ラーケン少佐だ! どういうつもりだ! 駐留艦隊は何故救援に来ない! 我々を見殺しにするつもりか!」
怒鳴り声を上げると出迎えに出た若い士官がもごもごと口籠った。こちらはメーキャップで負傷したように見せかけてある。相手は罪悪感でまともに視線を合わせられないようだ。良い調子だ、更に視線を強めると相手が怯えた様な表情を見せた。
「イゼルローン方面軍司令官にお会いしたい! 我々は帝都オーディンから重要な報せを持ってきたのだ。今回の不手際の件も有る、司令官閣下に是非とも会わねばならん!」
「わ、分かりました、こちらへ」
慌てて案内を始めた。おそらくは方面軍司令官に引き合わせて自分は解放されたいと考えているのだろう。迎えに出た事を後悔しているに違いない。
廊下を小走りに進む、俺の後をリンツ、ブルームハルト、クラフト、クローネカー達が続いた。此処までは順調に進んでいると言って良い。あちこちを損傷した巡航艦でイゼルローン要塞に逃げ込んだ。背後から迫る同盟軍の攻撃を受けながらだ。
砲撃が当たる事は無いと分かっていたがそれでもヒヤリとする時が何度か有った。イゼルローン方面軍司令部を押さえ外の同盟軍に連絡する。要塞主砲、トール・ハンマーを使えなくすれば一気に同盟軍が押し寄せるだろう。要塞攻略は不可能ではない。
正面にドアが見えてきた。結構大きいドアだ、当然だが中のフロアーも広いだろう。どうやらそこが司令部か……。案内をしてくれた士官が
「こちらへ、正面の部屋のさらに奥の部屋が司令部です」
と言いながらドアを開け中に入る、続いて部屋に入った。二十メートル四
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