第三十話 誘引
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か」
クブルスリー司令長官の発言に司令部要員がそれぞれの表情で頷いた。或る者はやはりという表情、そして或る者は忌々しそうな表情をしている。
これまでイゼルローン要塞駐留艦隊は非常に好戦的だった。要塞と協力するより功を競い合うため積極的に出撃してくるのが常だった。我々が通信妨害を始めたのは二日前、向こうにもイゼルローン回廊内のどこかに我々が居るという事は分かっているはずだ。にもかかわらず今回は出撃してこない。
そして今日になってから、駐留艦隊を引き摺りだす為に或る通信を発したがイゼルローン要塞からは艦隊の出撃は無い。クブルスリー司令長官の言う通りイゼルローン方面軍司令部の所為だろう。それが無ければ駐留艦隊は出撃してきたはずだ。
「如何します、駐留艦隊の出撃は無いものと判断して作戦を開始しますか?」
グリーンヒル参謀長が問いかけるとクブルスリー司令長官が少し迷うような表情を言見せた。
「……いや、もう少し待ってみよう。敵が迷っている可能性も有る。時間をおいて何度か通信を行ってくれ」
司令長官の答えに何人かが頷いた。
「どの程度待ちますか?」
「そうだな、六時間待とう。作戦の開始は六時間後とする、ローゼンリッター、巡航艦の準備を進めてくれ」
「承知しました」
六時間か……、まあ妥当だろう。それ以上待つと相手に不審を抱かれる。艦隊が出撃してくれた方が成功率は高いが止むを得ない。
……やはり時期を逸したのかもしれない、艦橋の沈鬱な空気に触れているとどうしてもその想いが胸に溢れてくる。イゼルローン方面軍司令部が無ければ駐留艦隊が出撃してくる可能性は高かった。作戦の実施はもっと容易だったはずだ。半年、いや三カ月早ければ……。周囲に知られぬようにそっと溜息を吐いた……。
帝国暦487年 7月 14日 イゼルローン要塞 イゼルローン方面軍司令部 ヘルマン・フォン・リューネブルク
奇妙な連絡が入ってきた。妨害が激しく途切れ途切れの通信だがオーディンから重要な連絡事項を携えてブレーメン級軽巡航艦一隻がイゼルローン要塞に派遣された、しかし回廊内において敵の攻撃を受け現在逃走中、イゼルローン要塞からの救援を望む……。
通信は罠だろうという結論は直ぐに出た。十日ほど前に増援軍を出すとオーディンから連絡が有ったのだ。オーディンは反乱軍が押し寄せてくる可能性大と判断していた。軽巡航艦を一隻派遣したのならその事について説明が有ったはずだ。この通信は駐留艦隊を引き摺り出し要塞と分断した上で叩こうとする反乱軍の策とみて間違いない。
運が良かったと言って良いだろう。フェザーンからの連絡が有った事で反乱軍の罠を見破る事が出来た。もしフェザーンからの連絡が無ければこちらも戸惑っていたはずだ。出撃案が出た可能性も十
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