ALO編
episode2 懐かしき新世界へ3
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「……まじかよ……」
冷静さを取り戻した俺は、肩で息をしながら周囲に茂る針葉樹の一本に凭れながら呟いた。
いや、訂正だ。とても冷静さなんぞ取り戻していない。
……だってさ、これ。
「……なんだよ、この体……まじかよ……」
体が、自分の体でなかった。
俺は、失念していた。かつてSAOではゲーム開始直後《手鏡》なるアイテムで自分の容姿を強制的に現実のそれと一致させられてしまったせいで、自分の体とバーチャルの体の差異を意識することは意外と少なかったせいだ。
「……いや、まじかよ……」
本来VRワールドというものは、「普段とは違う自分を演じる楽しさ」を大きな売りとして発展した。日常生活では困難な「別の自分を作り上げる」という難事を気軽にこなせて、それが割と受け入れられる環境が、大ヒットの理由の一つだったのだ。必然、VRMMORPGであるこのALOも、その理念に乗っ取っている。
だから、先程の派手な転倒のような事態も起こる。
現実の自分とこの世界の自分の体の感覚が大きく異なるせいで、歩行感覚が違いすぎるためだ。
「……まじかよ……」
今日四度目の「まじかよ」を口にして、空を仰いでいた頭をがっくりと俯けた。
その目線の先には、凍った水溜り。
このプーカ領、確かこのALO世界において北の方に位置する。そのため少し北……ノーム領側まで行けば、それなりに雪が積もっていたりもする。必然、所々にある水溜まりは、凍りついている。まるで、鏡のように。うん、正直どこまでも嬉しくないが。
足元の水溜まりは、くっきりはっきりと一人の妖精を……俺を映す。
「まじかよ……」
その表面に映る顔を、見て、五度目の……やめよう、これ以上数えても不毛になるだけだ。
その、顔はいい。なぜか現実の俺の寝ぼけ眼がしっかりと再現されている(ように見える)のは頂けないが、全体的な容姿としては世間一般の基準で言えば十分に及第点と言えるだろう。現実の俺と違って、随分と幼さの残る顔であるのだが。耳の尖りも妖精らしく、燈赤色の髪もこの世界ではポピュラーな色合いで特には目立つまい。そこも、まあいい。
問題は…いや、つらつらと語ってもしょうがない。
俺の、この世界での体を、一言で表現してやろう。
チビ、だった。
「……まじ、かよお……はは……」
笑ってしまう。きっと「虚ろな笑い」とはこういうのを言うのだろう。
ついでに言えば今の俺の目こそ、「虚ろな目」のお手本だろう。
俺は親父の血のおかげか、幼い頃から背は高かった。一般には幼少期に背が高い人間は二次成長期に背が伸び悩み最終的には急成長した小柄な子供にやがて追い抜かれていく……というような話
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