暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
ALO編
episode2 懐かしき新世界へ2
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錐形……いわゆる、テント、というものだったのだ。大きいところ……看板から見ればおそらくゲームで定番の「宿屋」か……では、コテージのようなものもある。その現代日本に生活するものとしてはあまりなじみのない住居は、この街のサーカス団、或いはジプジーとでも言うべき雰囲気に、とてもマッチしている。

 「いいじゃん」

 心からそう思う。

 うん、いいじゃないか。
 これなら取材というだけでなく、プライベートにも十分に楽しめそうだ。

 浮かれた気分のまま、邪魔にならないような場所まで歩いてきたのを確認。
 そして、ウィンドウを開き、

 「……っ?」

 眉を顰めた。

 「バグッてやがる……のか?」

 開かれたメニュー画面。

 名前のシド、HP、MP、種族名の「プーカ」、これはいい。間違いないし、数値も初心者然とした(まあこのゲームは完全スキル性なので、成長してもさほど増えないらしいが)ものだ。

 問題はその下にある、スキルスロットだ。

 横に並ぶ数値……熟練度が、おかしいのだ。普通は初期値……ものにもよるが、ほとんどは0か1のはずのそれが、埋まっているスロットの殆どが三ケタなのだ。いや、中には四ケタ……すなわち上限の1000に達して、マスター表示が付いているものすらある。そもそも、普通は初期ならこんなにスロットが埋まっているはずが無い。

 その表示を、じっと見つめながら、逡巡する。
 ゲームマスターに連絡すべきかどうか、と。

 ちなみにバグに恐れをなしている訳ではない。寧ろ逆だ。こういったVRMMOで、スキル熟練度というのは途方も無く長い時間をかけて成長させていくものだ。今のこの熟練度まで達しようと思ったら、一体何カ月……いや、下手すると年単位でかかってもおかしく無いかもしれない。

 正直、勿体ない。

 (バグ、ねぇ……しかし、この数字、どっかで……)

 そこまで考えた、その瞬間。

 (確か……っ!!?)

 まるで電撃に打たれた様に頭が働き始めた。

 そうだ。どうして忘れていたのだ。
 埋まっているスキルを見てみろ。体術、軽業、索敵、暗視、罠解除……これは。この数値は。

 「……SAOの、俺のキャラデータ……?」

 間違いない。
 そこに並ぶ数値は、俺の記憶のそれと完全に一致している。

 (ソードアート・オンライン……!)

 視界が、急に歪む。

 周囲の映像の解像度が落ちた訳ではない。逆だ。ナーヴギアから視覚野に与えられるゲームの世界の情報量に、俺の脳の方がついてこれなくなったのだ。脳裏にフラッシュバックした、SAOの世界の記憶が、視覚なんてものよりもはるかに重要な思考に絡め取られたせいで。

 どういうことだ?
 
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