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ドン=カルロ
第三幕その二
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・・・・・・」
 答えられなかった。もし答えたなら全てが終わるからだ。
「いえ、もうわかりました」
 だが答えなくとも結果は同じであった。
「そのようなことが許されると思っているのですか!?」
「言わないでくれ」
「いえ、言わずにはおれません!」
 公女は声をあらいものにした。
「それが一体そういうことかわかっておられるのでしょうか!」
「わかっていてもどうにもならないことがあるんだ!」
 彼は激昂してそう言った。
「開き直りましたね」
 公女はカルロの顔を見上げて言った。
「この期に及んで」
「それは・・・・・・」
 彼は自分が底なし沼にはまったことを悟った。そこへ誰かがやって来た。
「誰だ、そこで騒いでいるのは」
 見ればロドリーゴである。
「殿下、どう為されたのですか!?」
 彼はカルロに近付いて来た。
「エボリ公女も。一体どうしたというのです!?」
「殿下の秘密を知りましたの」
 公女は悪魔めいた笑みを浮かべて彼に対して言った。
「殿下の!?」
 彼は最初フランドルのことかと思った。
(いや、違うな)
 だが彼はそうではないとすぐに察した。
(まさか・・・・・・)
 ここでは彼は王が彼に対し語ったことを思い出した。
「では私はこれで」
 公女はそう言うとその場を立ち去ろうとする。
「お待ち下さい」
 彼はそんな彼女を呼び止めた。
「何処へ行かれるのです?」
「急用が出来まして」
 彼女は素っ気無く答えた。その時チラリ、とカルロを見た。
(やはりな)
 彼はその目の動きを見て全てを悟った。そし彼女に対して言った。
「貴女を行かせるわけにはいきません」
「何故ですか!?」
「貴女は今邪なことを考えておられるからです」
「あら、それはどうでしょう」
 公女はロドリーゴに対し不敵な笑みで返した。
「むしろ貴方の方が邪なことを知っているのではなくて!?」
「何!?」
 ロドリーゴはその挑発的な言葉に対し顔を顰めた。
「貴方が殿下のご親友であることはご存知ですわ。けれど私は殿下も貴方も地獄へ送って差し上げることが出来るということはご存知ないようですね」
「それは一体どういう意味だ!?」
「私も力を持っているということです」
 彼女と彼女の兄の宮廷での力は良く知っている。だがこの口調からはそれ以上のものを感じるのだ。
「殿下と私をか」
 ロドリーゴは彼女を睨み付けた。
「面白い、私はともかく殿下には指一本触れさせぬぞ」
 彼はカルロを庇うようにして言った。
「あら、強気ですわね」
 公女はそんな彼を嘲笑して言った。
「私が怒ればどういうことになるか一切ご存知ないというのに」
「戯れ言を。もし言ってみろ」
 彼は語気を強めた。

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