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形而下の神々
過去と異世界
ツバサと公式
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見せたのは大きく『行列』という分野と『極限』という分野の数学だ。

 この世の学力水準がどの程度なのかは知らないが、公式を自作したとか言ってたしツバサは馬鹿ではないだろう。

 行列や極限の事を知らないという事は、恐らくこれらの考え方そのものがこの世には存在しないのだろう。どうやらコチラ側と彼女らの世界では、根本的な数学が違うらしい。

 コチラの数学は当然、3次元までを前提に作られていたものだ。今では20次元の計算なんてものもやってるらしいが、俺は知らん。

 それに比べて、彼女らの世界。俺が今居る世界では4次元以上が存在する事が前提の数学だ。
 なので、必然的に高度な数学を使う。

 そのかわりコチラの数学は3次元までの計算に特化しているから、どちらにも長所はあるだろう。


 と、そうこうしているうちに気付けばイベルダまであと10km足らずの小高い丘の上まで来ていたようでサンソンが遠くの丘の上からこちらに手を振って俺たちを呼んでいた。


 サンソンに促されて丘に登ると、そこには眼下いっぱいに広がる赤茶けた石畳の街が広がっていた。
 彼は眼下の景色を見下ろしながら自慢げに声を上げる。


「これがイベルダだ。別名『赤の街』とも呼ばれている……どうだ? ここの風景は最高だろ?」


 彼の言う通り、まさに眼前の景色は壮観だった。赤の色は良く知る煉瓦のそれに似ていたが、アレは煉瓦ではない。まるでお椀をひっくり返したかの様に全ての建造物がドーム状をしていて、細々と盆地いっぱいに広がっているのだ。
 美しい夕陽の助けもあってか、輝いて見える赤い街。文明の産物らしい光は見えず、暖かな炎が街の街道を照らしていた。

 少し赤く染まりかけた一面の緑たちはそれだけでも息を呑む程なのに、丘と丘の裂け目いっぱいに広がっている暖かな赤に染まった町並みは、まさに『赤の街』と呼ぶに相応しいだろう。

「こんな景色もあるんだな」

 俺はそう呟いて目下の町並みに見入った。文字通り、この世の物とは思えない景色だった。その日はその美しい景色の丘で一泊し、ツバサからは最後の講義を受ける事になっている。

「最後に、公式の使い方です。公式を作っただけでは使えません。神の居る場所、すなわち神殿で神に向かって祈りながら頭の中でその公式について神に解説をするんです。それが認められたら、その公式は貴方のもの。神殿を出た瞬間から使えるようになってますよ」

 そう、彼女は簡潔に述べた。

「ほぉ、よく分かった。ありがとう」

 とりあえず公式を作って神殿で祈れば良いんだな。そこで早速その晩、俺はレミングスの移動神殿に入っていた。

「ここで祈るのか……」

 皆が寝静まった頃、静かな神殿に一人で入るのは初めてだか
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