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ドン=カルロ
第二幕その九
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いく」
「それは杞憂です」
「そうとも言い切れぬ。少なくともわしにとってはな」
「・・・・・・・・・」
 最早その顔は闇の中に消え入りそうであった。
「卿に頼みがあるのだ」
「はい」
 王はここでその顔の闇を何とか消そうとした。そして完全ではないが幾分かは消した。
「あの二人をよく監視してくれ。間違いがないようにな」
「わかりました」
 ロドリーゴはそれを聞いてカルロが何故あのように思い詰めているか理解した。
「わしは卿を信じる。それに応えてくれよ」
「御意に」
 ロドリーゴは頭を垂れた。
「頼んだぞ、全ては卿にかかっている」
「はい・・・・・・」
 ロドリーゴは顔を上げた。そして意を決した。
(陛下と殿下、そしてフランドルをお救いするには)
 彼はカルロがいる宮殿に顔を向けた。
(やはりあれしかない)
 その瞳に強い思いが宿った。
「侯爵」
 そこで王が彼を呼んだ。
「はい」
 彼はその声に応え再び顔を向けた。
「期待しているぞ」
「わかりました。必ずや陛下のご期待に添えます」
 王は右手を差し出した。ロドリーゴはその前に跪きそれに接吻をした。
 そして二人はその場を後にした。後には何も残ってはいなかった。

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