第二幕その六
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
るようにと」
「わかりました」
そして彼女は僧院に入っていった。やがてカルロが出て来た。
彼はエリザベッタの顔を見て青くなっている。それを見た公女は密かに思った。
(早く私にその気落ちを仰って下さればいいのに)
「あの」
そこでエリザベッタが皆に対し言った。
「これで何処かでお茶でも」
彼女は金貨を女官達の一人に手渡した。人払いである。
「わかりました」
皆頭を垂れその場をあとにした。こうして僧院の前にはカルロとエリザベッタだけとなった。
カルロはゆっくりとエリザベッタに歩み寄る。そして目を伏せて跪いて一礼した。
「お立ちなさい」
エリザベッタはそんな彼を立たせた。
「お話とは何ですか?」
彼は表面上は何とか平静を取り繕いながら尋ねた。
「母上にお願いがあって参りました」
カルロも息子として彼女に答えた。
「一体何をお願いに来たのですか?」
彼女はわかっていながらも再び尋ねた。それはいささか儀礼めいたものであった。
「私はフランドルに行きたいのです。どうもこのスペインの空気が合わないものでして」
「奇妙なことを仰いますね」
彼女はあえて冷たい声で言った。
「貴方はこのスペインの後継者だというのに」
「それは・・・・・・」
カルロはその言葉に対し息を詰まらせた。
「答えなさい、我が子よ」
彼女はこの時はまだ己を保とうとしていた。そして彼を自分の子と呼んだのだ。しかしそれが逆効果になってしまった。
「その名で呼ぶのは・・・・・・」
「それでは何とお呼びすればよろしいのでしょう?」
「・・・・・・・・・」
カルロは答えられなかった。重苦しい空気がその場を支配した。
「フランドルの件は私が陛下にお話しておきます。それではこれで」
彼女はそう言うとその場を去ろうとする。
「お待ち下さい!」
だがカルロはそれを急いで引き留めた。
「どうしたのです、まだ何か言う事があるのですか?」
「貴女は私に言うべき言葉がある筈です!」
カルロはエリザベッタの手を掴んで言った。
「何をですか!?」
彼女は今自分の心が大きく傾いたのを悟った。だがそれに対し必死にあがらった。
「離しなさい」
彼女は自分の手を掴むカルロに対して言った。
「はい・・・・・・」
カルロはその手を離した。
「唯一日とはいえ永遠に愛し合おうと誓ったというのに。貴女は何故私を避けられるのですか」
「それは・・・・・・」
今度はエリザベッタが言葉を詰まらせた。そして顔を俯ける。
「私が愛していたのは大理石の像なのですか!?心なぞ一切持たない。貴女は私に対して愛情など全く持ってはいなかったのですか!?」
「そんなわけでは・・・・・・」
彼女は自分の心の中にある本当の気持ちはよく知
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ